海外向けマーケティングのポイントとは?ローカライズの必要性について解説

効果的な海外向けマーケティングを行うには、ターゲットとする国や地域の特性を深く理解し、それに合わせてマーケティング戦略をカスタマイズする必要があります。国内向けのマーケティング戦略をそのまま海外に適用しても、期待した成果を得ることは難しいでしょう。

そのため、現地の人々の嗜好や行動パターンを把握し、それに合わせて製品やサービス、広告などをローカライズすることが求められるのです。

今回の記事では、海外向けマーケティングを成功に導くためのポイントを解説します。特に、ローカライズの必要性や効果的なローカライズのポイントを詳しく見ていきましょう。

海外向けグローバルマーケティングとは?

グローバルマーケティングとは、国や地域を越えた、国外市場において行うマーケティング活動のことを指します。企業が自国だけでなく、海外の市場にも進出し、製品やサービスを提供していくための戦略です。

しかし、国によって文化や習慣、言語が異なるため、自国と同じマーケティング手法をそのまま適用しても上手くいかないことが多いです。そこで重要になってくるのが、次ご紹介するローカライズというプロセスです。

ローカライズとは?

ローカライズとは、製品やサービス、またマーケティング戦略を、対象とする地域や言語に合わせて最適化させるプロセスのことです。これは、ただ単に言語を翻訳するだけではなく、その国や地域の文化や習慣、価値観に合わせて、製品の機能や見た目、宣伝方法などを変換していくことを指します。

そうすることで、顧客へのアプローチが円滑になり、製品やサービスをターゲットが受け入れてもらいやすくなることに繋がり、海外市場での競争力を高めることができるのです。

▼ローカライズと翻訳の違いについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

https://igni7e.jp/blog/the-difference-between-translation-and-localization

海外向けマーケティングにおけるローカライズの必要性

海外へ進出するためには、ローカライズは欠かせないほど重要な物です。もし、ローカライズを行わずに海外進出を試みた場合、その国や地域のユーザーの関心を引くことができず、結果的に売上が伸びない、あるいは全く売れないという事態に陥ってしまう可能性があります。

例えば、コストパフォーマンスや低価格を好む中国で日本の炊飯器を展開する際に、全くローカライズせず、日本の高品質・高機能な製品として1つ5万円で売り出したとします。その製品が相当の価値があったとしても、競合企業が1万円前後で出している中では、魅力は半減してしまいます。加えて、対象地域でのニーズがなければ顧客に全く興味を持ってもらえずに失敗してしまう可能性が高くなります。

中国の炊飯器の比較
参考元:2024美国十大热销电饭锅对比_电饭煲推荐...

その他にも、翻訳する際には言葉の表現方法やニュアンス、販売では商品パッケージのデザインや広告方法、商習慣など様々な面でローカライズが求められます。海外の市場で成功するためには、綿密な現地調査とそれにもとづくローカライズ戦略が不可欠なのです。

▼ウェブマーケティングに必要なローカライズについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

https://igni7e.jp/blog/localization-for-overseas-business

海外向けマーケティングを成功させる4つのポイント

グローバルマーケティング戦略を成功させるには、自社の特徴を明確にし、ターゲットを詳細に定義した上で現地のニーズや文化に適応させることが重要となります。そうすることで、現地の競合との差別化を図り、消費者の共感を得ることに繋がりブランドを適切に位置づけることが出来ます。

ここからは、そんな海外向けマーケティングを成功に導く4つのポイントをご紹介します。

ポイント1. 綿密な戦略立案

マーケティングを成功に導くためには、事前の入念な市場調査をもとにした綿密な戦略立案が不可欠です。まず、ターゲットとする市場の特性を深く理解することが重要です。市場規模、成長率、競合他社の動向、消費者のニーズや嗜好、購買行動などを詳細に分析します。

次に、得られた市場情報をもとに、自社の強みを活かせる最適な戦略を立案して製品やサービスの差別化ポイント、価格設定、販売チャネル、プロモーション方法などを決定します。

例えば、インドで日本酒を販売するとします。インドは、2023年の1人当たりGDPは約2,600米ドル(約40万円)と今後も長期的な成長が期待できる市場です。市場調査をもとに今後、日本酒の需要が増加することがわかれば、現地で好まれる味やパッケージデザイン、色を選定し、Facebook広告などで宣伝をするといったように戦略を立てることが出来ます。

実際に鳥取県では、ベジタリアンの人が多いインドのために動物性の食品を一切使わず、ヴィーガン認証されるような製品を展開しています。

ベジタリアンのための日本酒
参考元:鳥取県の日本酒を初出荷!インド人好みのお酒は…鳥取県鳥取市 | TBS NEWS DIG

このように、事前の綿密な市場調査を土台に、最適な戦略を立案し、社内の総力を結集して実行することが事業成功の鍵となります。

ポイント2. 詳細なターゲット設定

国や地域によって、人々の嗜好や行動パターンは大きく異なるため、マーケティング戦略を立てる際には詳細なターゲット設定が不可欠です。画一的なアプローチではなく、ターゲットとなる顧客層を細分化し、それぞれのセグメントに合わせたピンポイントのアプローチを行うことが求められます。

まず、いくつかの具体的なペルソナを作成しましょう。ペルソナとは、ターゲットとなる顧客の典型的な人物像を詳細に描写したものです。年齢、性別、職業、収入、趣味、ライフスタイル、価値観などの情報を盛り込み、まるで実在する人物のように具体的に設定します。これにより、ターゲット顧客の needs や wants を深く理解し、共感を持ってアプローチすることができます。

具体的には、「20代後半から30代前半の、都市部に住む独身女性で、健康志向が高く、オーガニック食品に興味がある層」といった具合です。ターゲットを明確に設定することで、的確なメッセージやチャネルを選択し、効果的なマーケティング施策を展開することができるのです。

ペルソナ作成の例

ターゲティングを行う際には、自社の強みや提供価値と、ターゲット顧客のニーズとのマッチングを意識することが重要です。綿密なターゲット設定とペルソナの活用により、国や地域ごとの嗜好や行動パターンの違いを踏まえた、きめ細やかなマーケティングアプローチが可能となります。

ポイント3. デジタルマーケティングの活用

インターネットの普及により、海外市場へのデジタルマーケティングが非常に有効な手段となっています。現地の人々が利用するプラットフォームを見極め、効果的に活用することが重要です。

例えば、フランスへ日本のアニメ商品を発信する場合には、FacebookやInstagramが最適なSNSプラットフォームとされています。これらのプラットフォームを通じて現地のアニメファンコミュニティにアプローチすることができます。現地語での投稿や、フランス人インフルエンサーとのコラボレーションなどを通じて、効果的な情報発信も可能となります。

フランスの人気SNSアプリ
参考元:【2022年】最新のフランスのSNS事情、人気のアプリなど徹底解説 | 訪日ラボ

海外市場への進出は、こうしたデジタルマーケティングを効果的に活用することでより大きなビジネスチャンスを掴むことができます。

▼海外向けのSNSのマーケティングを成功させる方法について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

https://igni7e.jp/blog/how-to-successfully-market-sns

ポイント4. 分析と改善作業

マーケティング施策の実施後は、その効果を多角的に分析し、PDCAサイクルを回すことが重要です。

まず、施策前後の各種数値データを収集・比較し、達成度合いを定量的に評価します。また、データの背景にある要因を探るため、定性的な分析も欠かせません。実際にプロダクトやサービスを利用したユーザーの生の声に耳を傾けましょう。

可能であれば、アンケートやインタビュー、SNSの口コミなどからユーザー体験の良し悪しを把握することもおすすめです。こうした潜在的な課題やニーズを発見し、次の施策に活かしていくことが肝要です。

マーケティングは一時的な取り組みではなく、継続的に最適化を図っていく活動だと認識しましょう。定量・定性の両面から効果検証を繰り返し、PDCAサイクルを高速に回転させることが、マーケティング成功の鍵を握ります。

PDCAサイクル

効果的なローカライズのポイント

それでは、具体的にどのようにローカライズを進めていけば良いのでしょうか。ここでは、文化的背景の反映や正確な翻訳、ターゲットに好まれるデザインに焦点を当ててポイントを解説します。

文化的背景の反映

製品やサービスをローカライズする際は、ターゲット市場の文化や価値観、ライフスタイルなどを深く理解し、それを反映させることが非常に重要です。日本語をただ現地の言語に直訳しただけでは、商品やサービスの魅力を伝えきれないため、現地の消費者のニーズや嗜好に合わせて製品やサービスを適応させる必要があります。

例えば、日本の炊飯器をアメリカへ展開するとします。日本の一般的な炊飯器は、基本的にどれだけ美味しく炊けるのかというところを重視して作られています。そのため、土鍋のように炊けるものやひっつきにくいコーティングがされているようなものが多くあります。

【日本の炊飯器】

日本の炊飯器
参考元:パナソニック 炊飯器 5.5合 急減圧バルブ おどり炊き 全面発熱5段IH式 ブラック SR-M10A-K

一方でアメリカでは、デザインは大きくて堅牢なもので、機能的にもボタン1つで完了するようなシンプルなものが好まれます。

【アメリカの炊飯器】

アメリカの炊飯器
参考元:Panasonic SR-42HZP 23-cup (Uncooked) Commercial Rice Cooker, NSF Approved, Stainless Steel Lid by Panasonic | パナソニック(Panasonic) | 炊飯器 通販

このように、ターゲット市場の文化や価値観、ライフスタイルを深く理解し、製品やサービスをローカライズすることで現地の消費者に受け入れられやすくなります。

言語の正確な翻訳

ローカライズの中でも、言語の翻訳はとても重要なポイントです。特に、製品説明やウェブサイト、広告などを現地の言語に翻訳する際は、そのままの直訳ではネイティブ目線から見ると不自然な文章になってしまったり、伝えたいニュアンスが違って伝わってしまう場合も考えられます。言語や文化の違いを考慮し、ターゲットにとって自然で分かりやすい表現を心がける必要があります。

例えば、日本語で「現状の悪い状況をもっと悪化させてしまう」ということを英語にする場合、AI翻訳を使用すると「It makes the current bad situation even worse」という文章になります。この文章でも意味は伝えることが出来ますが、より自然な言い方にする場合、ネイティブは「add insult to injury」といった慣用句で表現します。

AI翻訳の誤訳例

このように言語と文化の壁を越えて、効果的なコミュニケーションを行うには、翻訳者の言語能力だけでなく、現地の文化や習慣に対する深い理解が不可欠です。自社のみでこうした人材を確保することが難しい場合には、プロや翻訳会社に依頼することも検討すると良いでしょう。

▼海外向け翻訳を成功させるポイントについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

https://igni7e.jp/blog/translation-for-overseas

ターゲット層に受け入れられるデザインを採用

ターゲット地域のユーザーに訴求するウェブサイトやアプリのデザイン、商品のパッケージなどを作成する際には、現地の嗜好や文化的背景を十分に考慮することが重要です。

色使いやレイアウト、使用する画像やアイコンのスタイルなど、細部にまでこだわることが求められます。例えば、100円均一ショップのDaisoのサイトを見てみると、日本では1つの画面の中に多くの情報を入れて商品を掲載しています。下には重要なお知らせといったような情報も追記されています。

【日本版 Daisoウェブサイト】

日本ダイソーのウェブサイト
参考元:ダイソー

一方で、アメリカのサイトではトップ画面に大きな画像があり、下にはストアの詳細や近くのストアを検索できる検索ぺージに続く4つのボタンがあるのみでとてもシンプルでスタイリッシュなデザインとなっています。

【アメリカ版 Daisoウェブサイト】

アメリカダイソーのウェブサイト
参考元:DAISO

▼海外向けホームページを制作する注意点について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

https://igni7e.jp/blog/creating-a-website-for-overseas

また、キャラクターやマスコットの使用については、ターゲット地域の文化的背景を考慮する必要があります。キャラクターデザインが現地の人々に受け入れられるかどうかは、宗教的・文化的な側面も関係してきます。

2021年の3月にイランでは、「アニメに登場する女性キャラクターもヒジャブ(頭髪と首元を隠すために着用するスカーフや布)を着用しなければならないという法的見解を発行した」とイランの通信社が伝えたことがありました。この場合、日本のアニメをそのままイランで放送することはできず、女性のキャラクター全てを描き直す必要があります。

デザインのローカライズは、言語の翻訳だけでなく、視覚的な要素も含めて総合的に行う必要があります。可能であればネイティブのデザイナーや、ローカライズの専門家と協力しながら最適なデザインを追求していくことが大切です。

まとめ:的確なマーケティングとローカライズを行うことが海外進出成功の鍵

海外市場への進出には、単にマーケティング活動を行うだけでは不十分で、ターゲットとなる国や地域に合わせたローカライズが必要不可欠です。ターゲットの文化や習慣の違いを深く理解し、言語表現やデザインを最適化することで、現地の人々に受け入れられる製品やサービスを提供することができるのです。

海外進出を成功させるには、緻密な市場調査と戦略立案、そして多角面からの的確なローカライズが鍵となります。海外市場の獲得を目指す企業は、このローカライズの考え方をマーケティング戦略に取り入れ、実践していくことが求められるでしょう。

この記事を監修した人
Daisuke K
マーケター、CMO
2021年にCMOとしてIGNITEのへの参加を果たした。以前からマーケティング業界での勤務経験を有し、IGNITEでは海外市場向けのマーケティング戦略を展開している。あらゆる国や地域からの、BtoB、BtoC案件を総監し、海外進出を検討する日本国内の企業から、日本への参入を希望する海外企業までのサポートを行っている。
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