海外進出の失敗事例をご紹介!成功するための秘訣も解説

近年、多くの日本企業が海外進出に挑戦していますが、その一方で失敗に終わるケースも少なくありません。海外進出には、現地の文化や市場の理解、適切な戦略の立案など、多くの課題が伴います。

そこで、この記事では、日本企業の海外進出における失敗事例を分析し、その原因を探ります。また、これらの失敗から学ぶべき教訓を踏まえ、海外進出を成功に導くための秘訣についても解説していきます。

失敗事例も把握しておいたほうが良いのはなぜ

海外進出を検討する際、成功事例ばかりに目を向けがちですが、失敗事例から学ぶことも非常に重要です。なぜなら、他社の事例を分析することで、自社が同じような過ちを繰り返さないための教訓を得ることができるからです。

それでは、実際に他社事例をご紹介します。様々な事例を通して、海外進出に潜むリスクや課題を明確に認識し、それらを回避するための戦略を立てに役立てましょう。

海外進出失敗事例①キリンホールディングス株式会社

まず、ご紹介するのは、日本を代表する大手飲料メーカーであるキリンホールディングスです。その歴史は古く、1907年の創業以来、ビールを中心とした事業を展開してきました。

キリンホールディングス株式会社
参考元:https://www.kirinholdings.com/jp/

事例の概要

キリンホールディングスは、国内ビール市場の縮小を受け、海外展開を積極的に進めました。2009年に豪ライオンネイサンを買収し、フィリピンのサンミゲルにも出資しています。2011年には、ブラジルのスキンカリオールを3,000億円で買収しました。

しかし、ブラジルでの事業は、現地での価格競争に敗れ、のれん代の減損などにより、2015年12月期に560億円の最終赤字を計上する結果となりました。これは、上場以来初の赤字となり、課題を残す結果となりました。

失敗した要因

キリンのブラジル事業の失敗は、主に現地市場の事前の調査不足と高値買収が原因であると言えます。キリンは、ブラジルの競合状況やマーケットの特性を十分に理解せずに、スキンカリオールを約3000億円で買収しました。

ですが、その後のブラジル経済の不振や円安により、買収価格の割高さが明らかになりました。加えて、日本本社主導の中央集権的な管理を行ったことで、現地の実情に合わない経営方針を採ってしまい、業績不振に陥ってしまいました。

ブラジル進出は、成功しなかったものの、アメリカやイギリスを中心とした他国では、進出成功を成し遂げています。それは、リサーチや戦略起案を綿密に行った結果だと言えるでしょう。

参考元:https://www.digima-japan.com/knowhow/world/4740.php

海外進出失敗事例②楽天グループ株式会社

楽天グループ株式会社は、日本を代表するインターネット・サービス企業の一つです。ショッピング、旅行、金融など、多岐にわたるサービスを提供し、私たちの生活に深く浸透しています。

楽天グループ株式会社
参考元:https://corp.rakuten.co.jp/

事例の概要

楽天グループは、2014年に米国の大手ショッピングモールを運営するEbates(現在のRakuten Rewards)を買収し、米国市場への本格参入を果たしました。

しかし、現地での認知度不足や競合他社との差別化の難しさなどから、思うような成果を上げることができませんでした。2016年には、米国事業の業績不振により、多額の減損損失を計上する事態に至りました。

失敗した要因

楽天の海外展開における失敗要因の1つは、現地の市場特性や消費者ニーズを十分に理解せずに、日本国内で成功したビジネスモデルをそのまま持ち込もうとしたことです。

例えば、欧米市場では、Amazonをはじめとする強力なライバルが存在し、価格競争が激しいにもかかわらず、楽天は自社のモデルにこだわりすぎてしまい、価格面での競争力を失ってしまいました。競合の有無、競合の状況や強みなど、様々な側面から市場について理解し、ターゲット国の設定は本当に適切なのか、検討する必要があったと言えるでしょう。

また、現地の言語や文化への対応が不十分であったことも、ユーザー獲得の障壁となりました。ウェブサイトのローカライズがいかに重要なのか、理解することのできる事例です。

一方で、楽天グループのEC事業である楽天市場は2008年に台湾に進出し、成功を収めています。実際に台湾人の社員を確保し、台湾に合うマーケティングを行ったことが成功の要因として、あげられるでしょう。今では、楽天トラベルや楽天カードなどの事業も展開しているようです。

海外進出失敗事例③ニトリホールディングス

ニトリホールディングスは、家具や生活雑貨の販売で知られる大手小売企業です。その独自のビジネスモデルと経営戦略により、業界内で確固たる地位を築いてきました。

ニトリホールディングス
参考元:https://www.nitori-net.jp/ec/

事例の概要

ニトリホールディングスは、2012年に米国法人を設立し、2013年に「アキホーム」ブランドで米国に初出店しました。その後、最大6店舗まで拡大をするなどこれからの展開に期待が高まっていました。

ところが、トランプ政権下での中国からの輸入関税引き上げとコンテナ輸送コストの高騰により採算が合わなくなっていきました。それを受けて2022年10月、収益性改善の困難を理由に、2023年4月までに4店舗を閉店し、米国事業から完全撤退すると発表しました。

失敗した要因

ニトリがアメリカ市場から撤退する主な理由は、現地の大手小売店との競争激化、商品戦略や店舗運営での現地適応不足だと言えます。

特に、日本のトレンドに合わせた商品を販売してしまうなど現地適応が不十分だったこと、そして競争の激しい南カリフォルニアに集中出店したことが要因でした。現在は、10年間のアメリカ事業に幕を下ろし、東アジアや東南アジアなどの有望市場へ経営資源を集中させる方針を示しています。

海外進出失敗事例④メルカリ

国内最大手のフリマアプリと言えば、2013年にサービスを開始した「メルカリ」です。次は、そんなメルカリの事例を紹介します。

メルカリ
参考元:https://jp.mercari.com/?utm_source=google&utm_

事例の概要

メルカリは、日本国内では大きな成功を収めているフリマアプリ企業だが、海外展開では苦戦していています。英国での事業は、巨額の損失を出して撤退し、米国でも競合アプリとの差別化が難しくユーザー獲得に苦戦中です。

2018年の上場以降、米国事業は赤字が続いており、直近の四半期では70億円の営業赤字をとなっています。日本での成功モデルをそのまま持ち込んでも、現地の市場環境に適合しにくいことが、海外展開の難しさを示しているようです。

失敗した要因

メルカリのアメリカ事業は、現地の競争環境への適応と収益化の難しさという2つの主要な課題があります。日本で成功した戦略やアプローチ方法は、現地であるアメリカの市場環境には適合せず、競合アプリとの差別化が難しいため、ユーザー獲得に苦戦しているようです。

特に、アメリカではガレージセールなどの対面販売や、フェイスブックでのフリーマーケットが主流になっており、アプリを使った個人間取引の文化が根付いていません。また、チャリティーショップのような金銭的な動機を持たない人も多く、こういった対象国の文化や市場リサーチをしっかり行うことが重要になります。

その後、メルカリは、出品機能の充実やアプリのカスタマイズ性向上を含む、中長期的な成長戦略のための開発と投資を積極的に強化するよう取り組みました。その結果、少しずつではありますが、月間アクティブユーザーおよび総流通額は増加している傾向にあります。

月間アクティブユーザーおよび総流通額
参考元:https://pdf.irpocket.com/C4385/NJLt/OTOe/bekX.pdf

結果を分析し、改善に務めることがいかに重要か、よく分かる事例だと言えるでしょう。

海外進出時に起こりうる失敗理由とその回避策

それでは、様々な企業の失敗事例から考えられる海外進出で起こりうる失敗の理由とその回避方法を見ていきましょう。

海外進出の失敗理由とその回避策

1. 市場リサーチ不足

海外進出を検討する際、まず重要となるのが徹底的な市場リサーチです。対象国や地域の経済状況、競合他社の動向、ターゲットの文化や宗教などを詳細に分析する必要があります。

例えば、前述にも挙げている楽天は、欧米においてAmazonが、どれだけ強力な競合なのかを理解しきれていなかったため、アメリカ進出に失敗しました。こうした競合他社の分析や、対象国の文化や人気なども十分に調査することで自社の強みを生かすことにも繋げることができます。

また、それらのリサーチをもとに自社のビジネスモデルが、現地市場に適合するかを見極めます。万が一、現地のニーズにマッチしない商品やサービスを提供してしまうと、最初の肝心な顧客獲得に失敗するリスクが高まります。ターゲットが求めている商品やサービスを的確に把握するためにも市場リサーチは必要不可欠です。

【回避策】

市場リサーチには、十分な時間と予算を割くことがとても重要です。自社内のリソースだけでは、情報収集に限界がある場合は、現地の調査会社やコンサルタントに依頼することも検討すべきでしょう。

また、リサーチの結果、自社のビジネスモデルがそのまま通用しないと判断された場合は、柔軟にカスタマイズする勇気も必要となります。

2. 法規制とコンプライアンスの誤解

また、準備を入念に進めていても、法規制の影響で輸出自体が不可能になってしまうと、全て台無しになってしまいます。当然ですが、海外進出先の国や地域には、それぞれ固有の法規制が存在します。

例えば、日本からヨーロッパへ調味料を輸出する際、魚粉末、液卵、乳製品などの動物性原料が含まれていると、EU規則上「混合食品」として扱われるため、そのまま輸出することができません。混合食品の輸出には、原料の由来を証明する公的証明書や自己宣誓書の添付などが必要になります。

こうした法規制を正しく理解し、コンプライアンスを確保することは、海外でビジネスを行う上で欠かせない要件だと言えます。

【回避策】

進出先の法規制を確実に把握するには、現地の弁護士や会計士、行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。彼らは、最新の法令情報を持っており、企業の海外進出をサポートした経験も豊富です。専門家と連携しながら、法規制の動向を常にモニタリングし、必要な対応を迅速に行うことが重要となるでしょう。

▼海外進出時のサポート会社の選び方について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

https://igni7e.jp/blog/support-for-overseas-business-expansion

3. 言語や文化の違いによる障壁

海外進出先の言語や文化が大きく異なる場合、コミュニケーションの障壁が生じるリスクがあります。

例えば、現地の従業員や取引先とのやり取りにおいて、言葉の壁によって意思疎通がうまくいかず、ビジネスの効率が低下するといったことです。また、文化的な違いを理解せずに、自国の常識をそのまま持ち込んでしまうと、現地の人々との信頼関係を損ねてしまうこともあります。

【回避策】

言語の問題を回避するためには、現地のネイティブスピーカーを採用することが有効です。彼らには、自社の商品やサービスについて、現地の人々に正しく伝える役割を担ってもらいましょう。

また、文化の違いについては、自社で現地の習慣やマナーを事前に学習し、尊重する姿勢を持つことが大切です。現地の従業員や取引先との交流を通じて、異文化理解を深めていくことも重要なポイントと言えます。

4. マーケティング戦略の失敗

優れた商品やサービスを持っていても、現地の消費者に認知してもらえなければ、ビジネスの成功は望めません。海外進出に際しては、自国とは異なる消費者の嗜好やニーズを的確に捉え、それに合わせたマーケティング戦略を立案・実行することが求められます。

例を出すと、「歩行器」を販売している会社があるとします。中国で70〜80代の女性をターゲットに商品の広告を発信する時、その年齢層の人が使用しているプラットフォームを使用するのがベストです。この場合は、中国の約90%の人が利用しているWeChatやDouyinを利用し、ターゲット層が好んでいるジャンルに絞って広告を行うといったことが考えられます。そのため、若者向けの微博(Weibo)や小紅書(RED)といったプラットフォームは適切な場所とは言えません。

このように、ターゲットのニーズや好みに合わせてマーケティング戦略を立てることが、とても重要となります。

【回避策】

マーケティング戦略の成功には、進出先の消費者行動の理解が必要不可欠となります。現地の市場調査を的確に行い、消費者の購買行動やライフスタイルを分析した上で、地域に合わせたマーケティング戦略を練る必要があります。

また、現地パートナーとの連携により、市場理解を深め、戦略の実行力を高めることもできます。全て統一されたものではなく、地域ごとにカスタマイズされたアプローチが、消費者の共感を得るカギになります。

▼海外ビジネスを成功に導くマーケティング戦略について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

https://igni7e.jp/blog/how-to-successful-crossborder-ec

まとめ:海外進出に失敗しないためにはターゲット設定と戦略起案が鍵となる

海外進出を成功させるには、まず自社製品・サービスが現地ニーズに合致しているか入念に見極める必要があります。そこで、現地の文化や競合状況を分析し、最適なターゲット層を特定することが重要です。

次に、進出先の法規制や商習慣に適した事業モデルを構築し、現地パートナーとの協力体制を整えます。効果的なマーケティングでブランド認知度を高め、為替リスクや人材確保についても検討が必要になるでしょう。

海外進出はチャンスである一方で、リスクも伴うため、綿密な準備と進出後の柔軟な対応力が成功の鍵となります。スピード感を持って、実行に移すことが肝要です。

▼海外ビジネスの成功例についても知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

https://igni7e.jp/blog/business-for-overseas-case-study

この記事を監修した人
Daisuke K
マーケター、CMO
2021年にCMOとしてIGNITEのへの参加を果たした。以前からマーケティング業界での勤務経験を有し、IGNITEでは海外市場向けのマーケティング戦略を展開している。あらゆる国や地域からの、BtoB、BtoC案件を総監し、海外進出を検討する日本国内の企業から、日本への参入を希望する海外企業までのサポートを行っている。
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