llms.txt
の実装ガイド:定義、作成方法、効果
はじめに
大規模言語モデル(LLM)による情報収集が一般化する中、Webサイトの情報をLLMに対し、構造的かつ正確に提供する必要性が高まっています。本稿では、この目的のために提案された仕様であるllms.txt
について、その定義、実装方法、歴史的経緯、および期待される効果を技術的観点から解説します。
llms.txt
の定義と目的
llms.txt
とは、Webサイトの運営者がLLM(大規模言語モデル)に対し、サイトに関する構造化されたメタデータを提供するために設置するテキストファイルです。その主な目的は、LLMがサイトの全体構造、主要コンテンツ、および各ページの役割を効率的かつ正確に解釈できるよう支援することにあります。
このファイルは人間と機械の双方が可読なMarkdown形式などで記述され、従来のrobots.txt
がクローラーのアクセス制御を目的とするのに対し、llms.txt
はLLMによるコンテンツ理解を促進するためのガイダンスとして機能します。
llms.txt
の実装仕様
ファイル形式と推奨フォーマット
llms.txt
は、以下の構造を持つMarkdownファイルとして作成します。
LLMs v1.0
This is an llms.txt file, meant for consumption by LLMs.
It provides structured metadata about the IGNITE website.
The XML sitemap of this website can be found at:
https://example.com/sitemap.xml
IGNITE
URL: https://example.com
Pages
- [Home](/): Overview of IGNITE's services and solutions
- [Services](/services): Detailed descriptions of all service offerings
- [Case Studies](/case-studies): Examples of past projects and client success stories
- [Contact](/contact): Inquiry form and contact information
- ヘッダー:
LLMs v1.0
で仕様バージョンを宣言します。続けて、ファイルの目的を説明する英文を記載します。 - サイトマップ参照: LLMがサイトの全ページを網羅的に把握できるよう、
sitemap.xml
へのフルパスを明記します。 - サイト情報:
h1
タグ(#
)でサイト名を、その下にトップページのURLを記載します。 - 主要ページリスト:
h2
タグ(##
)でセクションを設け、サイト内の重要ページをリスト形式で記述します。各項目には、ページタイトル、相対/絶対パス、およびそのページの内容を要約した簡潔な説明を含めます。
設置場所
作成したllms.txt
ファイルは、Webサイトのルートディレクトリにアップロードする必要があります。
- 推奨パス:
https://example.com/llms.txt
このパスに設置することで、LLMのクローラーがrobots.txt
などと同様の規約に従い、自動的にファイルを検出・取得することが可能となります。サブディレクトリやCMSのファイル管理システム内部への配置では、意図通りに機能しない可能性が高いです。
参考として、弊社Webサイトのllms.txt
を以下に示します。
弊社サンプル: http://igni7e.jp/llms.txt
llms.txt
の経緯と現状(2025年8月時点)
llms.txt
は、以下の経緯で提案・普及が進んでいます。
- 2024年9月3日: Answer.AIのJeremy Howard氏により、仕様が正式提案される。公式サイトとしてllmstxt.orgが公開。
- 2025年初頭: サイトの全ページを網羅することを目的とした拡張仕様として
llms-full.txt
の概念が提示される。 - 2025年以降: Anthropic社(Claude開発元)が
llms.txt
を参照する機能を実装。実サービスでの利用が開始される。
現在、llms.txt
はW3Cなどが定める公式なWeb標準ではありませんが、一部の主要LLMプロバイダーに採用されており、デファクトスタンダード化が進む可能性があります。
llms-full.txt
との関係性および使い分け
llms.txt
と並行して、llms-full.txt
という拡張ファイルも存在します。両者の役割は明確に区別されます。

運用上の推奨事項:
- まず
llms.txt
を必須ファイルとして設置します。 - より詳細な情報提供が必要な場合、補足的に
llms-full.txt
を設置します。 - 両方を設置する場合、
llms.txt
内からllms-full.txt
へのリンクを記載することが望ましいとされています。
Webflowの場合はこちらからアップロード可能です。

現状の評価と期待される効果
推測されるメリット
- 情報解釈の精度向上: LLMがサイト構造や各ページの重要度を正しく認識し、サイトに関する問い合わせに対してより適切な回答を生成する可能性が高まります。
- 将来的な互換性: AIエージェントなど、自律的に情報を収集・処理する次世代技術との連携において、情報提供の精度を担保します。
現状の評価
現時点で、llms.txt
の設置が検索順位(SEO)やAI検索に直接的な影響を与えるというエビデンスは確認されていません。また、llms.txt
を積極的に参照していることが公表されている主要LLMプロバイダーは、Anthropic社が代表的です。
結論
llms.txt
の導入による即時的な効果測定は困難ですが、実装コストが極めて低い点を考慮すると、将来的なLLMおよびAI技術の発展を見据えた、合理的な先行投資と評価できます。
Webサイトの情報を機械可読な形で明示的に提供することは、今後のデジタルコミュニケーションにおける基本的な要件となる可能性があります。
参考
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