少子高齢化により国内市場の成長に限界が見え始めた日本企業にとって、海外進出は今や避けて通れない選択肢となりつつあります。
しかし、文化・法律・商習慣が大きく異なる海外市場では、行き当たりばったりの進出は高いリスクを伴います。
そこで今回は、海外進出を目指す日本企業に向けて、戦略策定の方法からリスク管理、成功事例までを詳しく解説します。
なぜ今、海外進出戦略が重要なのか
企業の成長を継続させるには、常に新たな活路を見出していく必要があります。特に日本では少子高齢化が進み、内需拡大の余地は年々狭まっています。一方、世界に目を向けると人口は増加を続け、新たな需要やビジネスチャンスが日々生まれています。

出典:UN, World Population Prospects|The 2024 Revision
こうした背景の中で、海外市場は日本企業にとって大きな成長機会を提供しています。ただし、言語・文化・法制度が大きく異なる市場に進出するには、綿密な準備が欠かせません。
事前の市場分析や戦略策定を怠ると、進出後に想定外の課題に直面し、多大なコストと時間を浪費するリスクもあるのです。
明確な進出戦略を持つことは、ターゲット市場の選定、リソース配分、マーケティング方針などを合理的に決定できる土台となり、結果的に成功確率を高めることにつながります。
「海外進出の目的」を明確にしよう
海外進出を検討する際は、「なぜ海外に出るのか」という目的をはっきりさせることが重要です。企業によって目的はさまざまですが、主に以下のようなケースが挙げられます。

自社の経営ビジョンや事業戦略の中で、海外進出がどのような位置付けになるのかを整理しておくことで、戦略全体の軸がぶれにくくなります。
たとえば、「新興国の中間層向けに販売網を広げたい」のか、「現地での生産コストを抑えたい」のかによって、取るべき進出形態や市場選定は大きく異なります。目的が曖昧なまま進出を進めると、戦略の優先順位が定まらず、途中で迷走する原因になりかねません。
【全4ステップ】海外進出の戦略における具体的な手順
ここからは、海外進出戦略を進める具体的な手順を紹介します。

STEP1:自社分析と内部リソースの整理
まずは経営理念を見直し、SWOT分析で自社の強みや弱みを整理します。製品やサービスが海外市場に適しているか、需要や顧客ニーズがあるかを把握するためには、現地でのヒアリングも欠かせません。製造力や営業体制、アフターサービスなども含めて多角的に分析し、最適な進出先と戦略を導き出します。
STEP2:市場調査とターゲット国の選定方法
海外進出では市場規模や成長性だけでなく、ターゲット国全体を総合的に評価する必要があります。長期的な成功を見据え、持続可能なビジネスモデルを構築するためには、具体的な市場調査が欠かせません。
GDP成長率や産業規模などの経済指標を多角的に情報を収集し、慎重に進出先を選定しましょう。
経済指標
- 1人当たりGDP(過去5年間の推移)
- 関連産業の市場規模・成長率
人口動態
- 人口増加率
- 年齢構成(高齢化率、若年層比率)
- 都市化率
その他の指標
- 法規制
- インフラ整備状況
- 文化背景
- 政治リスク
STEP3:進出方法の検討と選択
さまざまな進出形態から最適な方法を選ぶために、それぞれの特徴を理解することが重要です。主な進出形態とそのメリット・デメリットを紹介します。
STEP4:事業計画の策定とKPI設定
戦略が決まったら、具体的な事業計画を作成し、「何を、いつまでに、どれだけ達成するか」を数値化します。
- 売上高、シェア、利益率などの目標値設定
- 毎月・四半期ごとの進捗管理指標(KPI)
- 責任部署・担当者の明確化
- 定期的なレビューと軌道修正の仕組み構築
KPIを設定することで、曖昧な進出計画にならず、常に改善点を把握しやすくなります。
海外進出における4つのリスクと対策

政治リスク
海外進出前に政治リスクを入念に調査し、政情不安の兆候を早期に察知。現地政府や関係機関と信頼関係を築き、投資先を複数国に分散することでリスクを分散します。
経済リスク
為替変動による損失を防ぐため、先物取引・オプション取引などの為替ヘッジを活用。現地通貨での取引を増やし、外貨建て借入も最小限に抑えます。
法務リスク
進出国の法律・規制を専門家の助言を受けて詳細に確認。契約書や知的財産権の保護を徹底し、法的トラブルを未然に防止します。
文化リスク
現地文化や商習慣を理解する研修を実施。現地スタッフの登用や文化コンサルタントの活用で、スムーズなコミュニケーションと文化の違いに柔軟に対応する力を高めます。
海外進出を成功させるためのポイント
海外市場への進出には大きなチャンスがありますが、成功には細やかな準備と対応が欠かせません。ここでは、現地文化の理解、人材育成、柔軟な戦略変更といった、海外進出を成功に導くための重要なポイントを具体的に解説します。
現地文化・言語の理解とローカライズ戦略
海外進出では、進出先の文化や商習慣、言語を深く理解することが非常に重要です。単に自社の製品やサービスを海外に持ち込むだけでは成功は難しく、現地のニーズや価値観を的確に把握し、製品・サービス・マーケティング戦略を現地に合わせて柔軟にローカライズする必要があります。
例えば、消費者の嗜好や習慣に合わせた製品開発、現地語によるWebサイトや広告の作成、文化的なイベントやキャンペーンへの参加など、さまざまな施策が求められます。市場調査をもとに現地ニーズを徹底的に理解し、文化や法律、潜在的な課題まで事前に把握して対応策を準備することが、成功の第一歩となります。
グローバル人材の採用・育成
海外事業を推進するには、適切な人材の採用と育成が不可欠です。単に語学力が高いだけでは不十分であり、現地市場への深い理解や、文化の違いを乗り越えるコミュニケーション力、柔軟な対応力も求められます。
グローバル人材の育成に必要な要素は、図表を参考にしてください。

パートナーシップ戦略の活用
現地企業との提携やM&A、代理店契約などを通じて効果的なパートナーシップを築くことは、海外進出における大きな強みとなります。現地パートナーと連携することで、市場への理解が深まり、事業展開の効率化にも繋がります。
具体的な進め方は、以下の手順に沿って検討していきます。

成功事例に学ぶ海外進出のコツ
ここからは、実際に海外進出を成功させた日本企業の事例を紹介します。
日清食品:ローカライズの成功例

引用元:Nissin Foods
日清食品は、カップヌードルを世界100カ国以上で販売し、インスタントラーメンのトップブランドとして成長。2021年に発売50周年、累計販売数500億食を達成しました。各国の消費者ニーズに合わせた商品開発やM&A、アライアンスを活用し、販路を拡大しました。
株式会社コモ:独自技術と外部支援の活用

引用元:COMO
株式会社コモは、パネトーネ種乳酸菌を使った独自製法のロングライフパンで知られる企業です。2016年の香港「FOOD EXPO 2016」を機に香港へ進出し、ジェトロの支援を活用してシンガポールやニュージーランドにも展開しています。
ユニクロ:失敗から学んだ戦略転換

引用元:Uniqlo
ユニクロは過去に中国・イギリス・アメリカ進出で市場特性への対応不足により苦戦しました。失敗を教訓に、各国の消費者ニーズや競合状況に応じたローカライズ戦略へ転換。ターゲット設定やプロモーションを国ごとに最適化することで、現在は世界で3,000店舗超を展開するグローバルブランドに成長しています。
海外進出支援サービスの種類

海外進出には専門的知識が不可欠です。以下のような支援機関を活用するのがおすすめです。
- コンサルティング会社(市場調査・事業計画支援)
- JETROなどの公的機関(補助金・情報提供)
- 弁護士、税理士、通関業者、翻訳家などの専門家
まとめ
海外進出は企業にとって大きな成長機会をもたらす一方、戦略策定・市場調査・リスク管理・文化理解といった多面的な準備が欠かせません。
本記事で解説したように、海外進出において事前の情報収集と計画を徹底することが成功の第一歩です。自社の強みを活かし、現地ニーズに寄り添った戦略を描いて、グローバル市場への一歩を踏み出してみてください。
海外展開を本格的に検討されている方は、IGNITEまでお気軽にご相談ください。豊富な実績と専門知識を活かし、貴社に最適な海外進出戦略をご提案いたします。
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