近年では、AI技術の登場により、様々な分野で著しい発展が見られるようになりました。例えば、翻訳もその一つ。翻訳を行う際にもAI技術を活用することで、これまでのプロセスに革命的な変化が起こり、さらに迅速に行えるようになりました。しかしその一方で、AIだけでは補うことのできない、人間の翻訳者が得意とすることも多く、このような分野では人による独自のスキルがまだ必要とされています。そこで今回このブログでは、AI翻訳が得意とすることと、人間が得意とすることを解説します。両者の長所と短所を正しく理解し、うまく組み合わせることが作業効率化への鍵です。
AI翻訳が得意なこととは?
では、具体的にAI翻訳が得意とすることを見ていきましょう。
1. 早いスピードで翻訳できる
AI翻訳の最大のメリットは、そのスピードです。大量のテキストを短時間で処理することができるため、翻訳の納期を大幅に短縮することができます。これは、翻訳を急いでいる時や、迅速に翻訳する必要がある大量のコンテンツを扱っているときに特に最適だと言えるでしょう。AI翻訳は、人間とは異なり、休息を取ることなく、ひたすら作業を継続することが可能なので、効率良く、かつ迅速な翻訳プロセスを実現することができるのです。
2. 複雑な文章の翻訳も可能
AI翻訳は、長文や複雑な文章を扱うことに長けています。高度なアルゴリズムにより、複雑な文法構造を解析し、首尾一貫した翻訳を行うことができます。ただし、アウトプットの質は原文の質に大きく左右されることがあるため、注意が必要です。AI翻訳を活用し、正確で高品質な翻訳を行うためには、適切にプリエディットされた原文を、AIに提供することがポイントとなるでしょう。
3. 多言語翻訳
AI翻訳は、そのスピードと効率性から、多言語翻訳も得意としています。言語の切り替えが容易なため、一度に複数の言語に翻訳することができます。AIを使用することで、翻訳プロセスを合理化し、時間と労力を節約することができるため、複数の言語の翻訳を同時に必要とするプロジェクトに最適です。
4. 一貫性のある翻訳
例えば、複数の翻訳者が関わっている場合、翻訳の一貫性を維持することは困難です。しかし、AI翻訳であれば、この問題を解決することができます。AI翻訳は、そのアルゴリズムにより、トーンやスタイル、用語などの統一が可能。つまり、バッチ変換技術などを活用することで、言語表現に一貫性を持たせた翻訳を行うことができるのです。
人間の方が得意なこととは?
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続いては、人間の翻訳者が得意とすることを解説します。先ほど紹介した、AI翻訳と比較しながら見ていきましょう。
1. 文脈を考慮した翻訳
AIを活用することで、翻訳は大きな進歩を遂げたとはいえ、文章の文脈やニュアンスを把握することは難しいとされています。その一方で、人間の翻訳者は、書かれている文章を、広い視野でその文脈で理解する能力を持っています。例えば、企画書や報告書など、相手に配慮した表現が求められるビジネス翻訳では特に重要ですよね。人間が翻訳することで、その翻訳内容が意図した意味に沿うように調整し、与えられた文脈の中でメッセージをより効果的に伝えることが可能です。
2. イディオムなどを理解した上で翻訳ができる
イディオムやキャッチフレーズを理解し翻訳することは、AI翻訳にとって難題です。AIは文字通りに翻訳してしまうため、文章がぎこちない、あるいは意味不明な表現になってしまうことがあります。
反対に、人間の翻訳者は慣用表現への理解力があるため、慣用句やキャッチフレーズの背後に込められた意味を、正確に伝えることが可能です。また、文化的な知識や言語的な専門知識も持っているため、特定の表現が出てきた場合でも、適切に翻訳することができます。このような場合は人間の方がより自然な文章に翻訳し、読み手に明確にメッセージを伝えることができると言えるでしょう。
3. クリエイティブな表現を読み取った翻訳が可能
文学や詩、広告のコピーや商品説明など、創造性を必要とする文章は、人間の翻訳者が得意とすることの一つです。AI翻訳の場合、既存の言語パターンや慣習的な表現に偏ってしまうことがあるため、クリエイティブでユニークな翻訳をすることが困難です。人間の翻訳者であれば、クリエイティブなセンスと言語的なセンスがあります。そのため、翻訳文に創造性とオリジナリティを込めることができ、原文の本質を取り込んだ、より正確な翻訳内容の完成に繋がります。
▼海外ビジネスに必須のローカライズについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
https://igni7e.jp/blog/localization-for-overseas-business
4. 専門分野の翻訳
多くの翻訳者は、マーケティング、エンジニアリング、医療、法律など、特定の分野に特化してることが多いです。それとは反対に、AI翻訳は「正しい翻訳」をすることができますが、その分野で実際に使われている業界特有の用語や表現に精通していない場合があります。専門分野に精通した翻訳者は、専門的な知識や経験を持っていることにより、文脈的な自然さや文化的な適切さも考慮した、正確な翻訳を行うことが可能となります。
▼ネイティブチェックについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
https://igni7e.jp/blog/translation-native-checking
AI翻訳を効果的に活用するためには?
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ここまでお読みいただき、AI翻訳と人間の翻訳者による翻訳の得意な部分をご理解頂けたでしょうか。労力や時間を節約し、効率的に作業を行うことができるAI翻訳ですが、一方で正確さに劣るのが欠点。そこで、AI翻訳を活用する時にどのような部分に注意すれば、より効果的に翻訳を行うことができるのか紹介します。
AI翻訳を活用する際に注意すべきポイント
原文がAIに適していない文章になっていないか
AI翻訳の品質は、原文の品質に大きく左右されます。AI翻訳は、構造化された原文に沿って、その原文に最も適した翻訳を行います。そのため、原文にスペルミスや文法ミスがあったり、まとまりがなかったりすると、AI翻訳は正確な翻訳をするのに苦労する場合も少なくありません。
その点、人間の翻訳者であれば、言語的な能力、理解力によって、原文を正しく解釈し、洗練された翻訳を提供することができます。AIを活用し、より正しく活用するには明確な原文を作成する必要があるということになります。
日本語特有の問題
日本語は、AI翻訳にとっては特殊な問題です。英語などと比較し、日本語は主語や目的語が省略されることが多く、解釈は文脈により異なります。特に主語が「I」なのか「You」なのか「We」なのかは注意深く見ましょう。AI翻訳は、意図する意味を正確に理解することが難しい場合があります。さらに、人名、商品名、地名などの固有名詞を表す漢字は、特にAI翻訳が誤認する可能性が高いです。
他にも、「です・ます調」と「だ・だ・る調」が混在してしまい、正確な翻訳ができないこともあります。このような場合、日本語と日本文化を深く理解した人間の翻訳者の方が、正確でニュアンスのある翻訳を提供することができます。
まとめ
AI翻訳は大きな進歩を遂げ、迅速かつ効率的な翻訳を行うための貴重なツールとなっています。特に作業スピード、複雑な文章の処理、多言語翻訳などの分野では秀でていると言えます。
しかしその一方で、文脈の考慮、イディオムや創造的な表現を伴う文章、専門的な内容、日本語などAIにとって理解が難しい言語の翻訳、固有名詞などの部分においては、AI翻訳より、人間の翻訳者による翻訳が適していると言えます。最良の結果を得るには、AI翻訳と人間の翻訳を組み合わせ、双方の強みを生かすことが理想的なアプローチだと言えるでしょう。
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