コロナが明けて、どんどん増えているインバウンドの需要ですが、そんなインバウンド市場ではどのような業種が外国人観光客に好まれているのでしょうか。また、人気のスポットではどういった戦略で成功しているのでしょうか。この記事では、インバウンドビジネスで集客が見込める業種や成功するためのポイントについてご紹介していきます。
インバウンドビジネスで成功しやすい業種
それでは、それぞれの業種で成功している事例をもとに解説していきます。
旅行業界
旅行業界は、外国人旅行客と密接に関わる業種で、世界各国の観光客のニーズにあったツアーやサービスの提供を行うことで、インバウンドを効果的に集客することが可能です。
旅行会社
旅行会社は、外国人観光客に対して日本国内の旅行プランを提案・販売することができるため、インバウンド需要を確実に供給することができます。例えば、JTBでは、銀座に外国人向けのラウンジを設けています。そこでは、ツアーの提案からミールコントロール、レストランの手配など全て英語で対応可能として外国人観光客が安心して日本観光を堪能できるようにサポートしています。
代理店
代理店は、旅行会社と連携して、母国で営業を行うことで現地のニーズを的確に捉え、集客に貢献することができます。日本の代理店が台湾のツアーを現地プロモーションした結果、多くの日本人観光客を呼び込むことに成功しました。
宿泊業
旅行で必ず必要になるのが宿泊施設です。多くの外国人観光客は、おおよそ一週間ほどかけて、有名な観光地や郊外をゆっくり観光するため長期間の滞在を期待できます。
ホテル・旅館・民泊施設
外国人観光客の宿泊ニーズだけでなく、多言語化やバリアフリー設備の強化、日本のそこでしか体験できないユニークさを出すという方法も外国人から注目を浴びる一つの戦略です。東京の老舗旅館が客室のリノベーションと外国語対応を強化したところ、アジアを中心に多くの外国人宿泊客を獲得できました。やはり、日本の旅館や温泉には関心がある方が多いため選ばれる理由になりやすい傾向にあります。
小売業
小売業は、インバウンド観光の恩恵を大きく受けられる有望な分野と言えます。また、統計でも外国人観光客は記念品やお土産の購買意欲が高い傾向もあり、今後もビジネスチャンスが広がっていくでしょう。
免税店
免税店では、免税制度を利用することで、外国人観光客に対して価格競争力のある商品を提供できるため、インバウンド需要を惹きつけやすい業種です。例えば、九州の大型免税店が中国語対応を徹底したことで、中国人顧客を大幅に増やすことに成功しています。
土産物店・特産品販売
日本のお土産や名物品は、外国人観光客の関心が高いため、これらを扱う店舗は潜在的なインバウンド需要が高いと言えます。例えば、山梨県の特産である「ほうとう」を販売する店が、多言語パンフレットを作成したところ、海外からの来客が大幅に増えました。多言語対応することで、日本の特産品をより深く知ってもらうきっかけにもなります。
飲食業
海外でも日本食の人気は高いため、日本ならではの魅力を活かして外国人観光客への提供を強化することでビジネスの拡大も期待できる業種です。また、独自の雰囲気や味作りで他国には無い価値を提供できるほか、幅広い世代にアプローチすることが可能です。
レストラン・カフェ・居酒屋
日本食や日本の食文化に対する関心は世界的にも根強く、こうした店舗の人気は海外からの集客が期待できます。例えば、東京の自由が丘にある和食店「菜道(さいどう)」は、ベジタリアン向けの日本食レストランで話題になっています。宗教的にも肉や魚が食べられない外国人でも、せっかく日本に来たからには日本食を食べたいというニーズに完璧に答えています。こうした文化や宗教を考慮した気遣いも、日本ならではのおもてなし文化であり、日本食が人気を集める一つの理由ではないでしょうか。
体験型サービス業
最近では、外国人観光客の多くが観光以外の訪日目的の一つとして体験型アクティビティを選択しているようです。日本の文化や伝統に触れる体験には高い需要があり、その地域への理解が深まるきっかけにもなります。
文化体験
日本の伝統文化を体験できるサービスは、外国人観光客の高い関心を集めているため、インバウンド集客が期待できます。京都にある美好園では、英語で本格的な茶道教室を受けることができるため外国人からとても人気を集めています。また、その地域ならではの文化体験なども人気が高く、やはり特別感を味わえるものが観光客に好まれていると言えるでしょう。
テーマパーク
日本を代表するコンテンツを取り入れたテーマパークは、世界に通用する体験価値があり、インバウンド需要の取り込みに有利です。アメリカで生まれた最も有名なテーマパーク「ディズニー」ですが、千葉にある「ディズニーシー」は世界でも唯一のテーマパークです。他の国では体験できない魅力を求めて世界からも多くの観光客が足を運んでいます。
アウトドアアクティビティ
日本の自然を生かしたアウトドア体験は海外でも高く評価されており、インバウンド集客の見込みが大きいとも言えます。例えば、富士山の自然ガイドツアーを行う会社では、欧米からのツアー予約が年々増加しています。現地のガイドがついて回ってくれるため、初めての方には優しいルートを選んでくれるなど、安心して楽しめると人気を集めています。
ワークショップ
日本の食や工芸品などを、実際に作る体験ができるワークショップは、観光客の高い人気を集めています。東京の下町で行われている味噌作り体験では、アジアを中心に外国人参加者が50%を占めています。日本食に興味のある外国人も多く、お土産として持って帰ることもできるため、支持されています。
交通業
インバウンド市場で交通業を行うメリットは大きいと言えるでしょう。外国人観光客への移動手段の提供で新規顧客層を獲得でき、効率的なアクセス手段提供により利便性向上とリピーター獲得が期待できます。さらに、観光ルートの開発を通じて地域の知名度向上と観光資源の発信ができるので、インバウンド需要の拡大に伴いビジネスチャンスもつながる可能性が大きい業種です。
航空会社
LCCの普及で海外旅行がより身近になり、航空券需要が高まっている中、訪日外国人向けのプロモーションを強化すれば、インバウンド需要の取り込みが期待できます。日系航空会社が訪日外国人向けのキャンペーンを打ち出したことで、座席販売数が大幅に伸びた実績があります。
レンタカー
日本を周遊するための移動手段として、外国人観光客のレンタカー需要は高く、インバウンド集客が可能です。例えば、最近の事例では、ハワイからの訪日旅行者向けに、空港でのレンタカー受け渡し体制を強化した会社の売り上げが上がっている傾向にあります。
タクシー
外国語での案内や決済システムを整備することで、インバウンド需要の取り込みが期待できます。訪日外国人向けのアプリを導入した東京の大手タクシー会社では、収益が確実に伸びました。また、パンフレットの多言語化やキャッシュレス決済を加えることで選ばれる理由になっています。
観光バス
バス会社は、主要観光地を結ぶルートを運行することで、インバウンド需要を集めやすい業種です。欧米からの個人旅行者をターゲットに、無料のバス付き宿泊プランを販売した旅行会社では、宿泊者数を大幅に伸ばしたという実績があります。
インバウンドで成功している具体的な事例
ここからはインバウンド観光を成功させている具体的な事例について紹介します。
城崎温泉
参考元:https://kinosaki-spa.gr.jp/
城崎温泉は、2021年に入浴時のタトゥー解禁に踏み切ったことで、外国人観光客の受け入れ環境が大幅に整いました。コロナ後の急速なインバウンド需要回復に対応し、SNSでの情報発信を強化したことで、外国人観光客の城崎温泉へのニーズをしっかりと取り込むことができました。結果として2023年には、全体の宿泊者数の25%を外国人が占めるまでに至っています。
変なホテル
参考元:https://www.hennnahotel.com/
東京に本社を置く「変なホテル」は、斬新なホテルコンセプトとインバウンド対応が評価され、世界中から注目を集めています。客室のデザインはユーモア溢れる個性的なものが多く、SNS映えすることから、旅行者の間で話題となっています。
変なホテルでは、チェックインからチェックアウトまでの対応をロボットが行うなど、宿泊体験自体が外国人観光客の大きな魅力となっています。従業員やホームページの多言語対応に加え、AIによる自動翻訳や案内システムを導入するなどの工夫で、スムーズなホスピタリティを実現しています。
このユニークさと先進的な取り組みにより、変なホテルは世界中のインバウンドビジネスにおいて成功しており、2022年の宿泊者数は過去最高を記録しました。
ジブリパーク
2022年11月にグランドオープンした「ジブリパーク」は、世界で唯一の「となりのトトロ」をはじめとするジブリ作品の世界観を体感できるテーマパークです。ジブリの映画は世界的な人気があり、オープン前から国内外から高い関心が寄せられていました。
現在のジブリパークでは、従業員の多言語対応に加え、スマホアプリを多言語化するなど、外国人観光客の受け入れ体制が整っています。実際、オープンから約半年で100万人を超える入場者数を記録し、うち4割近くが訪日外国人客だったと報じられています。
世界に一つしかないという点と高い認知度で、今やジブリパークはインバウンド観光の目玉となっており、さらに入場者数を伸ばしていく見込みです。
▼その他にもインバウンドビジネスを成功させた実際の事例を知りたい、事例から成功のポイントを知りたいという方は、以下の記事もご覧ください。
https://igni7e.jp/blog/inbound-tourism-successful-case-studies
インバウンドビジネスを成功させるポイント3選
それでは、インバウンドビジネスを成功に導くポイントをご紹介してきます。
的確なターゲット設定
インバウンド需要は国や地域によって、宗教や文化的背景が大きく異なるため、事前のリサーチを行いターゲットを明確に設定することが重要です。例えば訪日中国人観光客と欧米からの観光客では、求める体験や関心の対象が大きく異なります。こうしたニーズの違いを把握し、狙うべき層を明確にすることで、効果的なプロモーションやサービス展開が可能になります。
綿密な戦略起案
インバウンド需要を取り込むには、事前に綿密な戦略を立てる必要があります。まずは情報発信の方法やSNS活用策、それらを通じた集客ルートなどを具体的に検討します。さらに、実際の受け入れ体制として、外国語対応、決済システムなどのインフラの整備も欠かせません。こういった、情報発信から実際の提供サービスまでをトータルで検討した上で、戦略を起案することが大切です。
▼インバウンドビジネスを成功させるための効果的な戦略について知りたいという方は以下の記事も一度ご覧ください。
https://igni7e.jp/blog/inbound-tourism-strategy
▼業種や取り組み内容によっては、補助金支給の対象となる場合もあります。インバウンド補助金に関して知りたいということは、以下の記事もご覧ください。
https://igni7e.jp/blog/inbound-tourism-subsidy
多言語展開を行うための人材確保
インバウンド需要を取り込む上で、外国語対応力は必須の要件です。簡単な言語対応だけでなく、高いホスピタリティを発揮できるように、語学力の高い人材を確保することが欠かせません。また、単にスタッフの能力を高めるだけでなく、翻訳ツールの積極的な活用なども検討する必要があります。
まとめ:インバウンドで集客したいなら、まずは訪日観光客の傾向について理解しましょう。
外国人観光客のインバウンドビジネスで成功するには、観光客の嗜好性や情報行動を理解し、求める体験や魅力をリサーチした上で戦略を立案することが重要です。言語や文化の違いを意識し、ターゲットを明確にして、質の高いホスピタリティを提供できる体制を整えることで、リピーターを獲得することに繋がります。インバウンド需要の実態をデータから把握し、自社の対応を具体的に検討することが、新たなビジネスチャンスに発展していくでしょう。
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