2023年7月時点の訪日外国人旅行者数は、前年比で大幅に増加しており、日本経済にとって重要な観光客源となっています。近年では、「オーバーツーリズム」といった単語もあがるほど、観光地では日本人よりも外国人を見つける方が簡単になっています。
そこで、今回の記事では、2024年の訪日外国人旅行者のトレンドを考察し、日本への旅行目的ランキングをご紹介しながら、企業の方へ有益な情報を提供します。急速に変化する市場状況を的確に捉え、日本の魅力を発信する戦略策定のヒントとなるでしょう。
訪日外国人の現状
新型コロナウイルス感染症の影響は、海外旅行者の行動に大きな変化をもたらしました。具体的に、以前は「コスパ重視」や「効率的な観光」を重視していた外国人旅行者ですが、最近は日本ならではの「体験型アクティビティ」や「非日常的な体験」への欲求が強まっています。
例えば、サステナブル旅行、地域密着型観光、体験型のコンテンツ、ローカル文化体験への関心が上がっています。また、旅行者の多くは、SNSといったデジタルツールを活用した情報収集・予約・決済方法の浸透しています。
今後は、こうしたトレンドを理解し、それに合わせたマーケティング戦略を立てることが重要となるでしょう。
訪日外国人の推移
2024年は、過去のデータや予測から訪日外国人旅行者の数増加は継続すると考えられていました。実際に日本政府観光局(JNTO)が発表している、2024年訪日外国人観光客者数の統計を見ても、コロナ前よりも旅行者数が増加していることが分かります。また、円安が後押ししていることも増加傾向の裏付けと言えます。

参考元:国土交通省観光庁(出典:日本政府観光局(JNTO)2024年 訪日外客数(総数))
しかし、こうした単純な増加だけでなく、その旅行者の属性や目的、行動様式といった要素が大きく変化している点を無視できません。特に、若年層やハイエンド層は、独創性と独自性のある旅行プランに大きな関心を示している傾向にあります。
国別の訪日外国人数
JNTOが発表している国籍/月別 訪日外客数(2003年〜2024年)では、韓国からの訪日観光客が1番多く、2023年と比較しても26.7%と増加しています。
また、中国の欄を見てみると伸び率が187.9%と急増しており、円安の影響もあり、日本の高品質な製品の「爆買い」を目的に来日する人が増えていると推測できます。
1位 韓国:8,817,800人
2位 中国:6,981,200人
3位 台湾:6,044,400人
4位 香港:2,683,500人
5位 タイ:1,148,900人

参考元:国籍/月別 訪日外客数(2003年~2024年)/日本政府観光局(JNTO)
訪日外国人の目的ランキング
観光立国として日本を魅力的な旅行先に位置づける上で、訪日外国人観光客の目的に迫ることは不可欠です。日本で何を求めているのか?その「目的」を深く理解することで、より効果的なマーケティング戦略を立て、観光客獲得に繋げることができます。
ここからは、訪日外国人の目的ランキングを元に、彼らの心を掴むためのヒントを深掘りしていきます。
1位:日本食・食文化体験
訪日外国人にとって、最も重要なのは、日本独自の文化や体験を味わうことです。
日本食への関心は非常に高く、世界中の人々を魅了する魅力的な要素の一つとなっています。和食を実際に体験するだけでなく、その文化や歴史も学ぶことで、日本の食文化に対する理解と愛着が深まります。
全国に展開している「釣り船茶屋ざうお」は、体験型レストランでまさにそのニーズに応えます。自分で釣った魚をその場で料理人が捌いて、さしみや焼き魚料理として楽しむことができます。釣りと日本食を同時に体験できるユニークさは、SNS映えするコンテンツとして人気を集めています。

引用元:Instagram zauo_shibuya(View More on Instagram)
英語のWebサイトや表記も充実しているため、安心して利用できるとSNS上でも拡散されています。自分で自ら釣った魚をその場で調理して食べることができ、観光客は単なる観光地を見るだけでなく、日本の独特な魅力に触れながら「思い出」として持ち帰ることができます。
2位:伝統文化体験・歴史体験
日本の伝統文化への関心は高く、忍者の神秘性、茶道の奥深さ、芸者・舞妓の魅力が外国人観光客を引きつけています。
特に京都では、日本の伝統にまつわるお寺や舞妓、伝統文化が多く存在していることから、こうした体験アクティビティが集まっています。歴史と伝統に根ざした体験は、記憶に残る貴重な体験として高く評価されるでしょう。
3位:自然風景の鑑賞
日本の1つの魅力でもある四季、そんな四季折々の美しい自然に恵まれた国を楽しみたいと訪日する外国人も増えてきています。

中でも、富士山や紅葉などの自然景観は、訪日外国人の心を捉えています。美しい風景を背景に写真を撮ったり、静かに自然を満喫する時間は、心安らぐ貴重な体験として注目が集まっています。
4位:温泉・リラクゼーション体験
日本の温泉は、世界的に見てもユニークな文化です。火山活動が活発な日本ならではの温泉は、単なる入浴体験を超えた、心身のリフレッシュ効果が期待できます。
露天風呂で美しい景色を眺めながら、あるいは伝統的な温泉旅館で日本の hospitality を堪能しながら、温泉に浸かる時間は至福のひとときとなるでしょう。近年では、温泉に併設されたスパやエステなども人気を集めており、美容と健康を求める観光客にもおすすめです。
5位:日本でのショッピング
日本は世界中から注目を集める、高品質な商品と伝統技術で知られています。金属製品やコスメなどの日本製品は、世界各国で高く評価されています。日本の商品を手に取り、その質の高さとデザインに触れることで日本の技術力や文化を肌で感じることができます。
外国人観光客に魅力的な商品の提案は、滞在時間を長くし、満足度を高める有効な手段です。
6位:日本のアニメ・マンガ・ゲームの聖地巡礼
アニメ、マンガ、ゲームの熱狂的なファンである外国人にとって、聖地巡礼は大きな魅力です。人気キャラクターの舞台となった場所を訪れ、その世界観を共有することは、大きな満足感をもたらします。

秋葉原や京都アニメーションなどは、多くの海外ファンにとって重要な観光スポットとなっています。サブカルチャーを活用し、新しい観光ルートの開発も重要な戦略になります。
7位:地域の祭りや伝統行事への参加
日本の祭りや伝統行事は、外国人にとって日本の文化を肌で感じ、独自の体験をする絶好の機会です。鮮やかな衣装、迫力ある神輿、独特の音楽、そして地域住民の温かさを感じることできます。
京都の祇園祭、函館の函館山花火大会など華やかな祭りや伝統行事への参加は、深い文化体験を提供します。観光客の体験は、日本の文化と魅力を理解するだけでなく、日本の日常生活を深く知る絶好の機会です。
【函館山花火大会】

引用元:函館の夏、三大花火大会の見どころ | 特集一覧 | はこぶら
8位:日本のスポーツ観戦
相撲や野球、サッカーなど、日本の伝統的なスポーツもまた、外国人観光客の間で人気を集めています。地方巡業の観戦ツアーは、地域の魅力を発見し、地元の人々と交流する機会を提供します。日本のスポーツ観戦は、日本の独特な文化や競技を体験する機会となり、観光客は新しい発見をすることができるでしょう。
9位:持続可能性・エコツーリズム
環境問題への意識の高まりとともに、持続可能な旅行への関心も高まっています。自然環境への負荷を最小限に抑え、地域社会に貢献するエコツーリズムは、今後の観光において重要なキーワードとなるでしょう。

自然豊かな地域でのトレッキングやサイクリング、地元の食材を使った料理体験、伝統工芸のワークショップなど、環境に配慮したアクティビティが求められています。宿泊施設においても、環境に配慮した運営を行うホテルや旅館を選ぶ観光客が増えています。
10位:都市観光・繁華街の街歩き
東京、大阪、京都といった大都市の観光は、依然として外国人観光客に人気です。それぞれの都市が持つ独自の文化や歴史、最新のトレンドに触れることができます。賑やかな繁華街の散策やショッピング、洗練されたレストランでの食事、そして刺激的なナイトライフも都市観光の魅力です。
近年では、定番の観光スポットだけでなく、路地裏散策や地元の人々が集まる場所を訪れるなど、よりディープな体験を求める観光客も増えています。
初めて日本にきた外国人から人気の観光スポット
日本には、世界中から観光客が訪れる魅力的な場所が数多くあります。中でも、初めて日本に訪れた外国人観光客に人気の観光スポットは、伝統と文化、そして現代的なエンターテイメントを融合した場所です。
このセクションでは、海外向けマーケティング会社として、日本人だけでなく、外国人観光客も熱狂する3つのスポットをご紹介します。
浅草寺(東京都)

浅草寺は、東京都台東区にある歴史と伝統が息づく寺院です。古くから多くの人々に親しまれ、江戸情緒あふれる風景は、外国人観光客にも大変人気があります。境内には、いくつもの小さなお店や屋台が立ち並び、お土産物探しを楽しむ人々で賑わっています。
鮮やかな朱色の本堂や五重塔、そして伝統的な彫刻が施された門など、多くの見どころがあります。境内には多くの観光客が訪れ、写真撮影を楽しんだり、参拝したりと、その活気は見ているだけでワクワクします。
特に、夜になると、幻想的なライトアップされた姿は格別です。浅草寺は、歴史と文化、そして現代のエネルギーが調和した、まさに日本の魅力を凝縮した場所といえるでしょう。 訪れた外国人観光客から「素晴らしい景色と文化体験ができた」と多くの高い評価を得ています。
チームラボ(東京都)

引用元:チームラボ / teamLab
現代アートとデジタル技術を融合させた世界初の空間体験施設、チームラボボーダレス。東京には2ヶ所あり、体験型アトラクションで訪れた外国人を魅了しています。
館内は、まるで夢の世界のような、色彩豊かでインタラクティブな作品が溢れています。観客は、周りの光や音、自分の動きに合わせて作品が変化していく様子を体験することができます。最新のテクノロジーによって創り出される、予想外の景色と不思議な体験は、訪れた外国人観光客にとって忘れられない記憶となることでしょう。
子供連れのファミリーや、インスタグラムなどで人気の場所に来たい、と考える外国人にも最適です。 特に、フォトジェニックな空間は、SNS映えも抜群で、海外の観光客に高く評価されています。
清水寺(京都府)

清水寺は、京都府京都市にある古刹(こさつ)で、その歴史と伝統を今に伝えています。清水舞台の景色は、多くの映画や写真にも登場しており、外国人観光客にも人気スポットです。
高い位置にある舞台からの眺めは素晴らしく、遠くの山並みを一望することができます。境内の美しい庭園と静寂は、観光客に特別な癒しを与えます。境内には、手作りの土産物屋や飲食店なども立ち並んでいるため、散策だけでも十分楽しめます。 近年、若い外国人観光客の間で人気が高まっている背景には、伝統と現代を融合させた魅力があると考えられます。清水寺の神秘的な雰囲気と、境内にある独特のエネルギーは、世界中の人々を惹きつけて離しません。
京都侍忍者ミュージアム(京都府)

引用元:SAMURAI NINJA MUSEUM: Samurai Museum in Kyoto & Tokyo | Maikoya
歴史好き、そしてアクションエンターテイメントを求める外国人観光客は、この京都侍忍者ミュージアムがおすすめです。日本の歴史上、多くの国民に愛される忍者たちの姿は、世界中で人気が高い傾向にあります。ここでは、時代劇を連想させる刀や衣装が展示され、日本の歴史に深い理解を示しています。
ミュージアムでのエンターテイメント体験は、忍者ショーや体験型展示など、数多く用意されています。写真撮影に最適なスポットが多くあり、記念に残る撮影ができるので外国人の顧客に人気です。外国人旅行者の心に響くような歴史探訪体験ができます。
まとめ
2024年訪日外国人旅行者の増加は継続すると予想されますが、単なる数増加ではなく、旅行者の属性や目的、行動様式が多様化している点を踏まえ、適切なマーケティング戦略が不可欠です。伝統文化体験、自然体験、グルメ、ショッピング、そして新たな体験型コンテンツへの関心の高まりを捉え、日本独自の「非日常的体験」を提供することが重要です。
特に、若年層やハイエンド層は、独自性のある体験を求めています。円安の影響もあり、中国からの旅行者増加も見込まれます。韓国や台湾などの既存の市場に加え、これらの市場のニーズを理解し、彼らの心に響く、文化・歴史、エンターテイメント要素を組み合わせた多様な観光体験を提供することが鍵となります。
日本独自の文化体験を重視する外国人観光客に対し、釣りと日本食体験などユニークな体験を提供することで、満足度を高める効果が期待できます。デジタルツールを活用した情報収集・予約・決済も浸透しており、スムーズな予約や情報提供体制も重要な戦略です。
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