気になるブランドは?アメリカで人気のベジタリアン・ヴィーガンブランド7選

近年アメリカでは健康志向や動物福祉、そして環境問題への意識の高まりから、ベジタリアンやヴィーガンのライフスタイルが急速に浸透。Z世代やミレニアル世代を中心に、食の選択が自己表現や価値観の延長と捉えられる傾向が強まってきており、植物由来の食品や代替肉製品、乳製品不使用のスイーツなどの需要が年々拡大しています。
この流れを受けて、アメリカ国内では多数のベジタリアン・ヴィーガンブランドが登場し、それぞれが独自のコンセプトや商品展開で市場を牽引。これらのブランドは単に「動物性原料を使わない」という枠を超え、近年よく耳にするサステナビリティやクリーンラベル、地域コミュニティへの貢献といった要素も重視しています。消費者との関係性の築き方にも工夫があり、SNSでの発信やインフルエンサーとの連携、店舗での体験型イベントなど、ブランド価値の創出にも力を入れています。今やヴィーガンブランドは、単なる食の選択肢ではなく、ライフスタイルやカルチャーとしての一面も担う存在となっているのです。
本記事では、そんなアメリカ市場で注目を集めているベジタリアン・ヴィーガンブランドをいくつかご紹介します。アメリカにおけるブランド戦略や最新トレンドを発信するメディア「Boston Brand Media」の情報をもとに、それぞれのブランドがどのような背景を持ち、どのような商品で顧客の心をつかんでいるのか、その特徴を掘り下げていきます。ぜひご覧ください。
▼ランキング
- Beyond Meat
- Impossible Foods
- Gardein
- MorningStar Farms
- Tofurky
- Amy's Kitchen
- Quorn
1. Beyond Meat

Beyond Meatは、植物由来の代替肉製品を展開するアメリカ発の革新的ブランド。2009年に設立され、動物性原料を一切使用せずに、本物の肉に限りなく近い食感や風味を再現する技術力で注目を集めました。
代表的な製品には「Beyond Burger」や「Beyond Sausage」などがあり、大豆ではなくエンドウ豆を主成分とすることで、高たんぱくかつグルテンフリーという特長を持っており、グルテンフリー食品を求めている方にもおすすめ。ビヨンド・ミートは、単なるヴィーガン向け製品にとどまらず、「誰もが日常的に選べるおいしい代替肉」を目指しており、一般の消費者やフレキシタリアン層にも広く支持されています。
スーパーマーケットだけでなく、マクドナルドやスターバックスなどの大手チェーンとのコラボレーションでも存在感を強めています。環境負荷の低減や持続可能な食文化への貢献を掲げるブランドとして、今後もアメリカを中心にグローバル市場での成長が期待されています。
2. Impossible Foods

Impossible Foodsは、2011年にスタンフォード大学の生化学研究者パトリック・ブラウン博士が創業した、米国カリフォルニア州レッドウッドシティ拠点の食品テック企業。2016年に発売された代表製品「Impossible Burger」は、エンドウ豆・大豆タンパク質、ココナッツ・ヒマワリ油、そして“heme”(ヘム)と呼ばれる、発酵酵母で合成された分子を使用し、肉の味・香り・赤身の“にじみ出る”表現を高精度に再現しています。
このhemeの導入により「本物と見分けがつかない」と評価され、Burger Kingの「Impossible Whopper」も2019年夏から全国展開され、店舗への来客数が約18%増加するなど商業的成功を収めました。また、2019年の小売進出以降、全米11,000店舗以上のスーパーで発売され、牛肉からの切り替え需要を後押し。実際、消費データによれば動物由来ミートからの代替使用が92%に上るなど、食の転換効果も大きいと報告されています。
環境面でも、従来の牛肉に比べて温室効果ガス排出量は約87%減、土地利用は96%少なく、水使用量も87%少ないとされ、持続可能なサステナブル食への貢献が明確です。
近年は牛肉だけでなく、鶏肉や豚肉代替製品(Impossible Chicken/Pork)にも開発範囲を広げており、世界中の食文化に対し“肉なしでも満足できる体験”を提供し続けています。
3. Gardein

出典:Gardein公式サイト
Gardeinは、カナダ・ブリティッシュコロンビア州発、現在はConagra Brands傘下の代表的なヴィーガン・プラントベース食品ブランドです。2003年に元シェフのYves Potvin氏が創業し、2009年に冷凍食品の市場参入を果たしました。当初は大豆・小麦・エンドウ豆由来のタンパク質やキヌア、アマランサス、ミレット、カムートなど「古代穀物」を組み合わせ、多彩な代替肉製品を展開。ビーフレス・ストリップス、クリスピー・チキン・テンダー、黄金のフィッシュレス・フィレなど、肉・魚・鶏肉・豚肉を網羅するラインナップが特徴的です。
2014年にはグルテンフリー製品も追加し、翌年にはPinnacle Foodsに約1.54億ドルで買収。さらに2018年にはConagraがPinnacleを買収する形で傘下となりました。現在では北米の2万2千店舗以上に流通し、冷凍食品だけでなく、スープ、朝食ボウル、ソーセージ、ジャーキーなど冷蔵・常温商品を含め多岐にわたるグルメを展開しています。
製品の味と食感にも定評があり、種類豊富で「手軽に肉の代替を楽しめる」と評価されています。製品群には「アルティメット・プラントベースド・バーガー」「バッファロー風チキンウィング」「朝食用ソーセージパティ」「プラントベースド・スープ」など新ラインナップが続々登場しており、植物性食品市場での地位を確固たるものにしています。
こうした豊富な品ぞろえと流通網、多彩な製品開発が、Gardeinを「ヴィーガンでもフレキシタリアンでも満足できる」ブランドとしてアメリカ市場で人気を博す理由といえるでしょう。
4. MorningStar Farms

MorningStar Farmsは、ヴィーガン・ベジタリアンの冷凍食品で広く知られるアメリカ発のブランドで、現在はKellanova(旧ケロッグ)の傘下にあります。1974年、Worthington Foodsが大豆ベースの「ミートレス」製品としてスタートし、家庭用冷凍庫に肉代替製品を届けたパイオニア的存在です。1999年にケロッグがWorthingtonを買収し、その後「朝食用バーガー」や「チキン風ナゲット」「ハンバーガー」「ホットドッグ」「ベーコン」「ピザロール」といった多様なラインナップを展開しました。
2019年以降、「全製品ヴィーガン化を2021年までに達成する」という目標を掲げ、卵由来のバインダー除去や新レシピ導入に取り組んでいますが、2024年時点でも一部に卵・乳成分を含む製品が残っており、消費者からは「約束が守られていない」と指摘される声も。
製品は北米で2万店舗以上に流通し、朝昼晩の冷凍・冷蔵製品と、業務用向け(学校給食や飲食店)など幅広いチャネルで利用されています。また2023年には「ステーキハウス風バーガー」やリブレット、チキンナゲット等の人気製品がTASTY賞を受賞し、更なる進化を遂げています。
さらに、環境への配慮にも注力し、バーチャル電力購入契約による再エネ調達、2022年以降の持続可能な大豆との連携、簡易リサイクル可能なパッケージ導入など、サステナブルな取り組みを強化しています。
MorningStar Farmsは、その長い歴史と幅広いラインナップ、高い流通網により、ヴィーガン・フレキシタリアン双方のニーズを取り込む存在として、アメリカ植物性食品市場で確固たる地位を築いています。
5. Tofurky

出典:Tofurky公式サイト
Tofurkyは、オレゴン州フッドリバーを拠点とするTurtle Island Foodsが1980年に設立し、1995年に登場した大豆・小麦グルテン由来のヴィーガン「ターキー」代替ローストブランド。創業者セス・ティボットは、当初テンペ商品を販売していましたが、感謝祭用の代替肉開発が功を奏し、Tofurkyローストは東海岸にも広まりました。
この製品は、豆腐と小麦グルテンを主原料とし、野生米やハーブ、スタッフィング、グレービーまで詰めたホリデー使用の調理キット。解凍後、オーブンで約1時間15分加熱するだけで、そのボリューム感と食卓の華やかさが評価されています。
Tofurkyブランドは現在、ローストだけでなく、デリスライス、ソーセージ、ホットドッグ、ジャーキー、ビーガンチキンなど全35種類以上を展開。特にデリスライスやソーセージは高い売上を誇る定番商品に。また全製品がヴィーガンかつNon-GMO、コーシャ認証済みで、環境・動物福祉への配慮も重視。工場はLEEDプラチナ規格の施設として新設され、再生エネ使用や持続可能な資材調達も徹底しています。
2023年、長年豆腐を供給してきた森永ニュートリショナルフーズに買収され、グローバルな流通・研究開発体制を強化。CEOのジェイミー・アトスは「国内外での市場拡大と製品革新に注力する」と述べています。
一方、redditでは「買収されても製品が変わらなければ支持する」「新製品展開や流通拡大に期待」といった肯定的な声が散見される一方で、「味や食感が変わった」と否定的な意見もあります。
6. Amy's Kitchen

Amy’s Kitchen(エイミーズ・キッチン)は、米カリフォルニア州ペタルマ出身の家族経営オーガニック食品ブランドで、1987年にアンディ&レイチェル・バーリナー夫妻により創業されました。その名は娘・エイミーに由来し、最初は手作りの「ポットパイ」からスタート。その後250種類以上の有機・ベジタリアン商品を展開し、現在は冷凍食品やスープ、缶詰、さらにはカリフォルニア州に3店舗のドライブスルー形式のベジタリアンレストラン「Amy’s Drive Thru」も運営しています。
全製品がベジタリアン(約120品がヴィーガン)、Non-GMO、動物性原料不使用で、グルテンフリー製品も多数。2020年にはBコーポレーション認証を取得し、2024年には再認証され大規模食品企業としては最高評価を更新しました。
環境への取り組みも積極的で、工場ではソーラー発電や再生水システム、廃棄物の90%リサイクル、包装材のリサイクル率75%、2030年までに完全リサイクル化を目指すなどのプロジェクトを推進。2023年には、冷凍「ブロッコリーチェダーベイク」が「Mindful Awards」で最優秀植物性商品に選出され、品質の高さも裏付けられています。
また、従業員支援にも力を入れ、社内に無償のヘルスセンターを設置、奨学金制度を通じて累計150万ドル以上を支給。地域への食事寄付も継続するなど、「人・環境・社会」に配慮したトリプルボトムライン経営を実践するブランドです。
7. Quorn

出典:Quorn公式サイト
Quornは、イギリス発のマイコプロテイン(菌糸体由来たんぱく質)を使った代替肉ブランドで、1985年にMarlow Foodsから市場投入されました。主原料は土壌由来の「Fusarium venenatum」という真菌で、発酵・抽出・加熱処理を経て得られ、高たんぱく・低脂肪・コレステロールゼロという栄養特性を備えています。
多様な製品ラインを展開し、ミンチ、チキン風ブロック、ナゲット、ソーセージ、フィレなど100以上に及ぶアイテムがあり、世界14カ国以上で販売展開中。一部商品は卵白をバインダーとして使用していますが、完全ヴィーガン仕様の製品はジャガイモ由来たんぱくを使用。
環境負荷低減の効果も大きく、牛肉と比較して土地使用は90%以上、水使用は12分の1、温室効果ガスは95%削減という試算があります。また、最近は自社製品に加え、KFCやNHSなどと提携し、他社向けにマイコプロテインを供給する「ハイブリッド肉」戦略を展開し、フレキシタリアン層にもリーチを広げています。
ただし、CSPIや一部消費者団体からは「“きのこ”と表記される誤解」「アレルギー反応のリスク」といった指摘もあり、安全表示やアレルゲン表示の明確化が求められています。それでもQuornは、菌由来プロテインという先進性と豊富な商品展開、環境メリットを武器に、代替肉分野のリーダーとしての地位を維持し続けています。
まとめ
アメリカにおけるベジタリアン・ヴィーガン市場は、もはや一部のライフスタイル層に限られたものではなく、一般消費者の間にも広く浸透しつつあります。Beyond MeatやImpossible Foodsのような代替肉ブランドから、Amy’s KitchenやTofurkyといった老舗の総菜・冷凍食品ブランドまで、各社が独自のアプローチで「植物由来でも美味しい・満足できる」食の選択肢を提供し、消費者の支持を集めています。これらのブランドに共通するのは、単なる“動物性不使用”というだけでなく、味・食感・栄養バランス、さらには環境や社会への配慮までを包括的に考慮した製品設計とブランディングにあります。食の多様性が進む中で、今後もヴィーガン市場はさらに進化していくでしょう。今や植物性食品は、ニッチな選択肢ではなく、新しいスタンダードの一部に。アメリカでベジタリアン・ヴィーガン食品を展開していくにはマーケティング戦略が必要です。その際はぜひ弊社IGNITEにご相談ください。
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