翻訳時に気をつけたい、見落としがちなミス

特定の言語から別の言語へ翻訳する際には、固有名詞などの特別な意味を持つ単語の表現方法に注意する必要があります。それらの表現は、文化的背景によって異なる場合があり、注意深く扱わなければ誤解や誤訳に繋がる可能性があります。このブログでは、一般的に見過ごされがちな表現を取り上げ、適切に翻訳するためのガイダンスを紹介します!

翻訳時に注意するべき国名

翻訳を間違えがちなジャンルのひとつに、国名があります。ここでは、正しい用語を使用することの重要性を理解して頂くために、いくつかの例を挙げて説明していきましょう。

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1. アメリカ

日本語では「アメリカ」というとアメリカ合衆国のことを指すのが一般的です。しかし英語で「America(s)」という場合、厳密にはアメリカ大陸全体のことを意味し、これには北米、中米、南米のすべてが含まれます。そのため、具体的にアメリカ合衆国のことを指す場合は「The United States」または「USA」を使用する方が適切です。ただし、アメリカ人のことを指す場合は「Americans」を使用しても問題ありません。

2. イギリス

「イギリス」の訳語としては「England」と「The United Kingdom」の2つがあげられますが、これらは指す範囲が異なるため注意が必要です。日本語で言うところの「イギリス」は4つの国からなる政治的連合体のことで、これはイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4カ国からなります。つまり「イギリス」を「England」と呼ぶのは、国土の南部のみを包含し、他の国々を無視することになります。混乱や誤解を避けるため、国全体について論じる場合は「The United Kingdom」または「UK」を使用するのがベストです。

3. 複数形になる国名

フィリピンやオランダなどの国は、英語にする場合「The Philippines」「The Netherlands」と複数形で書かれます。しかし、複数形であるにもかかわらず国名のため扱いは単数となり、「The Philippines are...」ではなく「The Philippines is...」と表現します。間違えやすいポイントなので注意しましょう。

日本独自の表現

言語はその国の文化と深く結びついているため、どの言語にも、その国の文化に特有の表現があります。日本では当たり前と思って使っている表現でも、他の国の言葉では意味が変わってしまう場合もあります。ここでは、そんな日本語に特有の表現をいくつか紹介します。

「海外」と「外国」

日本では「海外留学」や「海外マーケティング」など、「外国」という意味で「海外」という言葉を使うことが多いですよね。しかし、これは日本が島国であるからこその表現で、必ずしも全ての国に当てはまるわけではありません。「海外」の英語訳は「overseas」ですが、例えばアメリカ合衆国本土から見るとハワイは海を隔てた場所にあるため定義上は「overseas」、反対にカナダは別の国ですが、陸続きのため「overseas」とはなりません。日本は島国であるため「海外」と「外国」の区別が曖昧で、同じ意味の言葉として扱われているのです。

したがって、翻訳の際には「overseas」を使うべきか「abroad」や「international」に置き換えるべきか、ユーザーの位置情報も考慮に入れて判断することがポイントです。

「正社員」「上司」「部下」などの区別

国や地域の文化によって制度や概念が異なるため、特定の職種や役割を翻訳することは困難な場合があります。例えば欧米社会では、日本語で言うところの「正社員」と「アルバイト」には雇用形態の違いがなく、月ごとの勤務時間によって「Full-time」「Part-time」と判断されているだけの場合もあります。また、「上司」「部下」などの上下関係も日本ほどはっきりしていないため、翻訳すると不自然に感じる場合もあります。翻訳する際には相手側の文化を理解するだけではなく、雇用制度などの知識も必要になってくるので気をつけましょう。

英語で細かく意味が分かれる動詞について

また反対に、日本語では1つの動詞として扱われているものの、英語にすると微妙に意味が異なる同義語が複数存在する場合があります。このような動詞を翻訳する場合、意図するニュアンスと比較し、最も適切な類義語を選択することが重要です。以下の例を通してみてみましょう。

「始める」を意味する英単語

英語には 「begin」「start」「commence」「initiate」など、「始める」を意味する単語が複数あります。これらには微妙に異なる意味合いがあるため、原文の意味を明確に理解し、適切な訳語を選ぶ必要があります。意味と文脈を注意深く考慮し選択するようにしましょう。

「やめる」を意味する英単語

「始める」と同様に「やめる」という動詞にも「quit」「stop」「resign」「retire」などニュアンスが微妙に違う言葉があります。適切な単語を選択するためにも、場合に応じて意図する表現を慎重に汲み取る必要があります。

「外国人」を意味する英単語

「外国人観光客」など日本語では「外国人」という言葉は頻繁に使われます。しかし英語で「外国人」にあたる「foreigner」という言葉には排他的なニュアンスがあり、外部の人間であることを強調するような印象を与えます。意図しないネガティブな意味合いを避けるためにも、文脈に応じて適切な表現を採用することが望ましいです。

例えば、観光客を指す場合は「tourist(s) 」、また「日本国籍以外の人」という意味を強調する必要がある場合には「non-japanese citizen(s)」と表現することもできます。基本的には、国籍や出身地によって個人を区別するのではなく、包括性を重視した表現を使うようにしましょう。

性別にとらわれない表現を選択する

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普段何気なく使っている言葉でも、実は伝統的な性別役割の価値観が含まれているという場合があります。昨今のジェンダー観に沿わない表現は、ユーザーに不快な印象を与えてしまう場合があるので注意しましょう。以下に気をつけるべき表現とジェンダーニュートラルな代替表現を紹介します。

「Business man」や「Police man」など性別を特定する表現

「Business man」や「Police man」のような表現は、本質的に性別を前提としており、異なるアイデンティティを持つ個人を尊重できていません。そのため、「Business person」や 「Police officer」など、より包括的でジェンダーニュートラルな用語を使用することが推奨されます。これらの代替案は、すべての性別の個人を指し、性別を断定することを避けることができます。

「主婦」も性別にとらわれない表現に変更する必要がある

日本語では「専業主婦」または「主夫」という言葉が一般的に使われていますが、この英語訳に当たる「Housewife」は性差別的なニュアンスを含むとされています。この表現を使ってしまうと、女性の主な役割が家事に限定されていることを意味し、ジェンダー・ステレオタイプを助長する誤解を招きかねません。昨今は「Housewife」の代替案として「Homemaker」や「 Stay-at-home parent」といった性別にとらわれない言葉を使うことが一般的です。これらの用語は、男性も女性も家庭内の役割を担うことができることを認識し、ジェンダーバイアスを強化することを避けた表現です。

人種差別的表現の可能性

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人種や肌の色に関わる表現は、慎重に扱わなければ、意図せず差別的な印象を与えてしまう可能性があります。ここでは特に気をつけるべき具体例を見ていきます。

ブラック企業、ホワイト企業などのように色で判別することを避ける

日本語では、搾取的または不公正な慣行を持つ企業を指すために「ブラック企業」という言葉がよく使われます。しかし、このように「ブラック」という言葉をネガティブな意味合いで使用することは、特に欧米社会では適切ではありません。反対に、評判の良い企業や信頼できる企業を表すために、「ホワイト企業」という言葉を使うことも同様です。基本的に、特定の色にネガティブな意味合いやポジティブな意味合いを持たせることは不適切とされています。

「美白」は白いことが優れている表現になる可能性がある

「美白」という言葉は、スキンケアや化粧品の文脈でよく使われ、より明るい(白い)肌を実現することを意味します。しかし、この言葉は白い肌が本質的に優れていることを示唆しており、人種差別的または白人至上主義を助長するものとして捉えられる可能性があります。より多様な美しさを尊重したアプローチに変えるために、「美白」は「bright(明るい)」や「肌の輝き」などの代替表現に置き換えることが望ましいです。

▼海外向け翻訳を成功させるポイントについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

https://igni7e.jp/blog/translation-for-overseas

文化面での翻訳は人間の力が必要

この記事では、翻訳において差別や文化的誤解を助長するような表現に注意する必要があることを解説しました。このような落とし穴について理解し、ご紹介したより適切に表現するための代替策をぜひ参考にしてください。

  • 排他的な表現
  • 性別役割を強調する表現
  • 人種差別的な印象を与えかねない表現

このような文化的に不適切な要素を考慮して翻訳することは現状AIにとって困難であり、読者に誤解を与えてしまうリスクがあります。そのため、このような分野では人間の翻訳者のチェックが必須だと言えます。

特にプロの翻訳者は、文化的な背景を理解した上で、繊細なトピックでも正確な翻訳を提供することができます。インクルーシブな言葉は、より理解しやすく公平な社会を作るために重要です。言葉の選択に気を配り、翻訳を通じて多様性を推進していきましょう。

▼ネイティブチェックについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

https://igni7e.jp/blog/translation-native-checking

この記事を監修した人
Daisuke K
マーケター、CMO
2021年にCMOとしてIGNITEのへの参加を果たした。以前からマーケティング業界での勤務経験を有し、IGNITEでは海外市場向けのマーケティング戦略を展開している。あらゆる国や地域からの、BtoB、BtoC案件を総監し、海外進出を検討する日本国内の企業から、日本への参入を希望する海外企業までのサポートを行っている。
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