外国人観光客に自社のサービスをより広く認知させたい、あるいはWebサイトを多言語化したいものの何から着手すべきか判断が難しい。訪日外国人の急増に伴い、こうした課題を抱える事業者が増えています。飲食店や宿泊施設、観光施設、小売店など、インバウンド需要を取り込みたい業種にとって、Webサイトの整備は今や欠かせない取り組みといえるでしょう。
そこで本記事では、インバウンド対策として効果的なWebサイト制作のポイントを、具体的な施策とあわせて詳しく解説します。
なぜインバウンド対策にWebサイトが重要なのか
訪日外国人観光客が日本での旅行を計画する際、インターネットでの情報収集は欠かせません。観光地、宿泊施設、レストラン、ショッピングスポットなど、旅行に必要なあらゆる情報をオンラインで調べてから日本を訪れるのが一般的です。
いわゆる「旅マエ」の段階で、自社のサービスを見つけてもらえるかどうかが、インバウンド集客の成否を大きく左右します。
Webサイトは「必須」ではないが「あった方がいい」
Webサイト制作はインバウンド対策の「絶対条件」ではありません。実際のところ、訪日外国人の多くはTripAdvisorやGoogleマップを起点に店舗や施設を探しています。そのため、まず優先すべきは以下の2つのプラットフォーム管理です。
Googleビジネスプロフィール
Googleビジネスプロフィール(旧Googleマイビジネス)は、Googleマップや検索結果に表示されるビジネス情報を管理するツールです。営業時間、写真、口コミへの返信など、基本情報を多言語で充実させることで、Webサイトがなくても一定の集客効果が見込めます。
TripAdvisor
TripAdvisorは、特に欧米からの観光客が頻繁に利用する口コミプラットフォームです。施設を登録し、写真を充実させ、口コミに丁寧に返信するだけでも、認知度と信頼性は大きく向上します。
上記のプラットフォームでの対策を優先すべきとはいえ、Webサイトがあることで得られるメリットは確実にあります。予約システムの導入、詳細なサービス説明、ブランドイメージの訴求など、プラットフォームだけでは実現しにくい価値を提供できます。リソースに余裕があれば、Webサイトの整備も検討する価値は十分にあると言えるでしょう。
旅行者の3段階の行動
旅行者の行動は「旅マエ」「旅ナカ」「旅アト」の3つの段階に分けられます。旅マエは旅行前の情報収集や予約の段階で、Webサイトやソーシャルメディアが主な情報源となります。旅ナカは実際に日本に滞在している間で、スマートフォンを使ったリアルタイムの情報検索が中心です。旅アトは帰国後のことを示し、口コミの投稿やリピート訪問の検討が行われます。

これらすべての段階において、Webサイトは重要な役割を果たします。旅マエでは予約や詳細情報の確認に使われ、旅ナカではアクセス情報や営業時間の確認に利用されます。旅アトには口コミサイトとの連携や、次回訪問に向けた情報提供ができます。
また、訪日外国人はInstagramやTripAdvisorなどのソーシャルメディアや口コミサイトも活発に利用するため、これらとの連携も重要です。Webサイトを起点として、SNSや口コミプラットフォームと相互にリンクさせることで、より多くの潜在顧客にリーチできるようになります。
インバウンド対策で成功するWebサイトの特徴
インバウンド対策を意識したWebサイトには、いくつかの共通する特徴があります。ここでは、訪日外国人に選ばれるサイトになるために押さえておきたい5つのポイントを紹介します。
多言語対応(最低限の言語)
インバウンド対策の基本は、多言語でのコンテンツ提供です。訪日外国人の国籍は多様ですが、すべての言語に対応するのは現実的ではありません。そこで、優先順位をつけて対応言語を選ぶことが重要です。

迷ったら、まず英語だけは対応しておきましょう。英語は世界共通語として広く使われており、英語圏以外の観光客でも英語で情報を探す人は多いです。実際、アジア圏の観光客でも、母国語のコンテンツがなければ英語で検索するケースがほとんどです。また、ChatGPTなどのAIツールも英語コンテンツを優先的にインデックス・参照する傾向があるため、AI検索時代においても英語対応の重要性は増しています。もしリソースに限りがあるのなら、まずは英語だけでも最低限対応しておくことを強く推奨します。
次に重要なのが中国語で、訪日観光客数が最も多い国からの旅行者に対応できます。中国語には簡体字と繁体字があり、中国本土向けには簡体字、台湾・香港向けには繁体字を用意するのが理想です。韓国語も訪日観光客数の多さから優先度が高い言語です。
さらに、近年はタイやベトナムからの訪日客が増加しており、これらの言語への対応を検討する事業者も増えています。自社の顧客データやアクセス解析を確認し、どの国からのアクセスが多いかを把握した上で、対応言語を決定することをおすすめします。
モバイルファースト設計
訪日外国人の多くは、スマートフォンを使って情報を検索します。旅行中に「近くのレストラン」「観光スポットへの行き方」などをその場で調べるケースが多いため、モバイル対応は必須です。
モバイルファースト設計とは、スマートフォンでの表示を最優先に考えてサイトを設計するアプローチです。テキストが小さすぎて読めない、ボタンがタップしにくい、ページの読み込みが遅いといった問題があると、ユーザーはすぐに離脱してしまいます。特に表示速度は重要で、海外からのアクセスでもストレスなく閲覧できるよう、画像の最適化やコードの軽量化を行いましょう。
予約・問い合わせの導線
訪日外国人がWebサイトを訪れる大きな目的のひとつは、予約や問い合わせです。この導線がわかりにくかったり、対応言語が限られていたりすると、せっかくの見込み客を逃してしまいます。
予約フォームに関しては多言語化はもちろん、入力項目も「極力シンプルに」が鉄則です。。名前、メールアドレス、電話番号、希望日時など、必要最低限の項目に絞ることで、入力の手間を減らせます。また、コミュニケーションツールについても、メールだけでなく、LINE、WeChat、WhatsAppなど、各地域で普及しているアプリへの対応を検討すると良いでしょう。中国からの観光客にはWeChat、東南アジアからの観光客にはWhatsAppが好まれる傾向があります。
決済対応に関する表記
飲食店や小売店、宿泊施設など、オンライン決済が発生するビジネスでは、多様な決済手段への対応が重要です。クレジットカード対応は基本として、中国からの観光客向けにはAlipay(アリペイ)やWeChat Pay(ウィーチャットペイ)への対応も検討しましょう。
これらのモバイル決済サービスは、中国人観光客にとって非常に身近な支払い手段です。対応していることをWebサイト上で明示することで、安心して来店・予約してもらいやすくなります。決済対応のロゴをフッターや予約ページに掲載するだけでも、信頼性向上に効果があります。
地図・アクセス情報の掲載
日本の住所表記は外国人にとってわかりにくいものです。そのため、Google Mapsの埋め込みは必須といえます。Webサイト上に地図を埋め込むことで、ユーザーは現在地からのルート検索を簡単に行えます。
さらに親切なのは、最寄り駅からの道案内を写真付きで掲載することです。「駅の〇〇出口を出て左に曲がる」「この看板が見えたら到着」といった視覚的なガイドがあれば、土地勘のない外国人でも迷わずたどり着けます。こうした細やかな配慮が、顧客満足度の向上につながります。
インバウンド向けWebサイトの多言語化のコツ
Webサイトを多言語化する際には、いくつかの重要なポイントがあります。ここでは、効果的な多言語化を実現するためのコツを解説します。
機械翻訳 vs ネイティブ翻訳:メリット・デメリットと賢い使い分け
翻訳方法には「機械翻訳」と「ネイティブ(人力)翻訳」の2つがあり、それぞれの特性を理解して使い分けることが重要です。

- 機械翻訳(Google翻訳、DeepLなど)
- メリット:低コストかつ一瞬で翻訳が可能。
- デメリット:細かなニュアンスの欠如や、文脈に合わない不自然な表現になるリスクがある。
- ネイティブ翻訳
- メリット:その言語を母国語とする人が読んでも違和感のない、高品質で自然な文章。
- デメリット:コストと制作時間がかかる。
Google翻訳やDeepLに代表される機械翻訳は、低コストかつ即座に翻訳できる点が最大の魅力ですが、文脈に合わない訳語が選ばれるなどのリスクも孕んでいます。対してネイティブ翻訳は、その言語を母語とする人が読んでも違和感のない高品質な文章に仕上がる反面、相応のコストと時間が必要です。
機械翻訳でも「ないよりは良い」
リソースが限られている場合でも、機械翻訳を活用する価値は十分にあります。完璧な翻訳ではなくとも、英語や中国語のコンテンツが存在するだけで、外国人ユーザーにとってはアクセスのハードルが大きく下がるからです。
ただし、機械翻訳を導入する際は「翻訳コンテンツを独立したページ(URL)として作成すること」が欠かせません。JavaScriptを用いて同一ページ内で言語を切り替える「動的翻訳」は、検索エンジンのクローラーが内容を正しく認識できず、SEOの観点から推奨されないためです。英語版は/en/、中国語版は/zh/といった独立した構成にすることで、現地の検索結果にも表示されやすくなります。
効率的な運用のヒント
すべてのページを完璧にする必要はありません。トップページやサービス紹介、予約ページといった「顧客の意思決定に直結する重要ページ」にはネイティブ翻訳を使い、更新頻度の高いコンテンツには「機械翻訳+ネイティブチェック」を組み合わせるのが、最も効率的で賢いアプローチです。
ローカライズの重要性
多言語化で重要なのは、「翻訳」と「ローカライズ」は別物だという点です。翻訳は言葉を別の言語に置き換えることですが、ローカライズはその地域の文化や習慣に合わせてコンテンツを最適化することを意味します。
たとえば、日本語の「おもてなし」という言葉をそのまま英語に翻訳しても、その文化的背景は伝わりません。「心を込めたサービス」「期待を超えるホスピタリティ」といった補足説明を添えることで、意図が伝わりやすくなります。また、価格表記の通貨、日付の形式(日/月/年 vs 月/日/年)、写真に写る人物の多様性など、細かな点にも配慮が必要です。
翻訳すべきページの優先順位
すべてのページを一度に翻訳するのは、コスト的にも工数的にも大変です。そこで、優先順位をつけて段階的に進めることをおすすめします。
最優先はトップページです。ここがユーザーの第一印象を決める重要なページであり、サイト全体の内容を把握するための入り口となります。次に、サービスや商品を紹介するページ、アクセス・地図情報、予約・問い合わせページが続きます。これらは顧客が行動を起こすために必要な情報です。よくある質問(FAQ)ページも、問い合わせを減らし、顧客の不安を解消するために有効です。ブログやニュースなど、頻繁に更新されるコンテンツは、優先度を下げて対応しても問題ありません。
インバウンド対策で活用すべきWebマーケティング施策
Webサイトを整備したら、次は集客のためのマーケティング施策に取り組みましょう。インバウンド対策では、通常の国内向けマーケティングとは異なるアプローチが必要です。
海外SEO対策
検索エンジン最適化(SEO)は、インバウンド集客においても重要な施策です。ただし、ターゲットとする国や地域によって、対策すべき検索エンジンが異なる点に注意が必要です。

欧米圏やアジアの多くの国ではGoogleが主要な検索エンジンですが、中国では百度(Baidu)が圧倒的なシェアを持っています。韓国ではNAVERが広く使われています。ここで重要なのは、GoogleへのSEO対策だけでは、BaiduやNAVERでは上位表示されないという点です。
百度(Baidu)への対策は完全に別の戦略が必要です。中国ではGoogleがブロックされているため、中国本土からの観光客を本格的にターゲットにするなら、百度対策は避けて通れません。ただし、百度で上位表示されるためには、中国語のネイティブコンテンツ、中国国内または香港のサーバーでのホスティング、さらにICP許可証(中国政府への登録)が必要になるケースもあります。これらの対応にはかなりのコストと労力がかかるため、中国市場を重点ターゲットにしない限り、百度対策は優先度を下げてもよいでしょう。
NAVER対策はGoogleより取り組みやすいです。韓国ではNAVERとGoogleがほぼ同等のシェアを持っており、月間82万人以上の韓国人観光客が日本を訪れています。NAVERはGoogleと似た技術的基盤を持っていますが、韓国語コンテンツの充実と、NAVERブログやカフェ(コミュニティ)などNAVER独自のエコシステムへの対応が効果を高めます。中小事業者にとっては、Google対策をしっかり行った上で、余力があればNAVER向けの韓国語コンテンツを充実させるのが現実的なアプローチです。
多言語サイトのSEO対策では、hreflangタグの設定も重要です。hreflangタグとは、検索エンジンに「このページはこの言語・地域向けです」と伝えるためのHTMLタグです。これを正しく設定することで、英語で検索しているユーザーには英語版のページが、日本語で検索しているユーザーには日本語版のページが表示されるようになります。
海外向けSNS活用
訪日外国人の多くは、旅行先の情報収集にソーシャルメディアを活用しています。特にInstagramは、ビジュアル重視のプラットフォームとして、観光地や飲食店の魅力を伝えるのに適しています。美しい写真や動画を定期的に投稿し、ハッシュタグを工夫することで、海外からのフォロワーを増やせます。
中国向けには、小紅書(RED、レッド)というプラットフォームが注目されています。中国版Instagramとも呼ばれるこのアプリは、若い女性を中心に人気があり、口コミマーケティングに非常に効果的です。また、TripAdvisorへの登録も忘れてはなりません。特に宿泊施設や観光スポットでは、TripAdvisorの評価が予約の意思決定に大きな影響を与えます。
口コミ対策
口コミは、インバウンド集客において非常に強力なツールです。Googleビジネスプロフィール(旧Googleマイビジネス)を登録・最適化することで、Google検索やGoogleマップでの露出が高まります。
口コミへの返信も重要です。良い口コミには感謝を伝え、悪い口コミには誠実に対応することで、店舗や施設の信頼性が高まります。可能であれば、英語や中国語など、投稿者の言語で返信することを検討してください。翻訳ツールを使ってでも母国語で返信があると、ユーザーに好印象を与えます。
インバウンド対策で成功しやすい業種と特徴
インバウンド向けWebサイトを整備する際、特に高い投資対効果(ROI)を期待できる業種には共通の成功パターンが存在します。どのような強みを持つ業種が、Web戦略によって成果を最大化できるのか、その具体的な理由と活用法を解説します。
飲食店
飲食店は、数ある業種の中でもWebサイト整備の成果が最もダイレクトに現れる分野です。料理という「視覚情報」は言語の壁を容易に超えるため、サイト設計次第で集客率を劇的に向上させることができます。成功している店舗の多くは、寿司やラーメンといった日本食ブランドの魅力を高画質な写真で訴求するだけでなく、店舗の空気感までを直感的に伝えています。
また、外国人観光客にとって最大の障壁となる「電話予約」を排除し、多言語対応のオンライン予約システムを完備している点も特徴です。アレルギー表記やハラール・ベジタリアン対応をサイト上で明文化することで、旅先での食事に慎重な層からも「安心して選べる店」としての信頼を獲得し、確実な来店へと繋げています。
宿泊施設
ホテルや旅館にとって、自社サイトの充実は単なる情報発信に留まらず、OTA(オンライン旅行代理店)への高額な手数料を削減するための「攻めの経営戦略」となります。Booking.comやExpediaなどのプラットフォームは集客に寄与しますが、自社サイトでの直接予約比率を高めることは、利益率を抜本的に改善する鍵となります。
成功している施設は、OTAの定型フォーマットでは伝えきれない「温泉の情緒」や「懐石料理のこだわり」を、動画やストーリーテリングを用いて多角的に演出しています。さらに、公式サイト限定の特典を用意したり、スムーズな多言語決済機能を実装したりすることで、比較検討中のユーザーを自社サイトへと強力に引き込み、リピーター化を促す仕組みを構築しています。
体験型施設
「モノ」から「コト」へ消費がシフトする中で、着物レンタルや伝統工芸、日本独自の文化体験を提供する施設は、Webサイトとの親和性が極めて高いといえます。訪日外国人の多くは「日本でしかできない体験」を熱心に探しており、体験のプロセスを可視化した動画コンテンツや、参加者のリアルな熱量を伝える構成が非常に効果的です。
こうした施設では、予約の利便性を高めるだけでなく、サイト内で「シェアしたくなるフォトスポット」を提案するなど、体験後のSNS拡散までを戦略的に設計しています。多言語でのスムーズな予約動線と、口コミを生む仕掛けを組み合わせることで、広告費に頼りすぎない持続的な集客サイクルを実現しています。
まとめ
インバウンド対策におけるWebサイト制作は、単なる多言語翻訳に留まりません。ターゲットとする国や地域の文化に合わせたローカライズ、モバイル環境での操作性、そして離脱を防ぐための予約・決済導線の確保が高度に組み合わさって初めて、実益を生む「資産」となります。さらに、サイト公開後の海外SEOやSNS運用、口コミ対策を連動させることで、集客の爆発力はさらに高まります。
訪日外国人観光客のニーズが多様化する今、ターゲットに「刺さる」デジタル戦略の重要性はかつてないほど高まっています。自社サイトからの直接予約を増やしたい、海外ユーザーに響くコンテンツが分からない、あるいは多言語サイトを作ったものの集客に結びついていないといった課題をお持ちの事業者様は、ぜひIGNITEへご相談ください。インバウンド市場に精通したプロフェッショナルが、貴社の強みを世界へ発信し、確実な成果へと導くパートナーとして伴走いたします。
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