韓国のサラリーマンは何にお金を使う？支出項目5選｜海外市場リサーチ｜IGNITE

韓国のサラリーマンにとって、日々の支出は生活の安定や家計の運営に直結する重要なテーマです。近年は物価上昇や住宅費の負担が大きく、毎月のお金の使い方には明確な傾向が見られます。食費や住居費といった生活必需の支出が最も大きな割合を占める一方で、交通・通信費や教育費も欠かせない項目となっています。また、娯楽や交際費といった消費も一定の比率を保ち、仕事と生活のバランスを整える役割を果たしています。

本記事では、公開されている調査データや統計をもとに、韓国のサラリーマンがお金をどのように使っているのかをランキング形式で紹介します。各項目の支出の背景を知ることで、韓国のライフスタイルや社会的価値観を理解する手がかりになるでしょう。

▼ランキング

（一般公開データをもとに）

​​1.食費（食材・外食）

2.住居費（家賃・光熱費）

3.交通・通信費

4.教育費

5.娯楽・趣味・交際費

1位：食費（食材・外食）

韓国のサラリーマンにとって、最も大きな支出項目は食費です。これは単に家庭での食材購入だけではなく、韓国特有の外食文化が深く関係しています。韓国では昼食を外で済ませる人が圧倒的に多く、オフィス街では定食屋や食堂、ファストフード店などがランチタイムに大賑わいとなります。

一般的なランチ代は8,000〜12,000ウォン程度であり、週5日の勤務を続ければ月に20万〜30万ウォンが昼食代だけで消えていきます。さらに夕食に同僚や取引先との会食が加われば、外食費はさらに膨らみます。韓国の会社文化では「회식（フェシク／会食・飲み会）」が人間関係を円滑にする手段として根付いており、飲み会や焼肉店での食事はサラリーマンにとって半ば義務的な支出。こうした文化的背景により、食費は他国に比べても特に高い割合を占める傾向にあります。

また、近年の物価上昇も食費を押し上げています。韓国統計庁のデータによれば、2023〜2024年にかけて食品価格は前年同期比で平均5〜10％上昇し、特に肉類や野菜、乳製品は値上げ幅が大きいと報告されています。そのため家庭での自炊を増やしても、家計に与える負担は決して小さくありません。韓国の主婦層や単身世帯の多くは、スーパーや伝統市場を回って少しでも安く食材を手に入れようと努力していますが、それでも全体の生活費に占める食費の割合は年々増加しています。

さらに、韓国ではカフェ文化が非常に盛んであり、毎日のようにコーヒーやスイーツにお金を使う人も多いです。大手チェーンから個人経営のカフェまで店舗数は世界有数の規模で、仕事の合間や退勤後に立ち寄る習慣が生活の一部になっています。カフェでの一杯が5,000〜7,000ウォン程度と決して安くはないため、毎日利用すれば月に数万ウォンの追加支出につながります。若い世代のサラリーマンや女性社員の間では、カフェでの時間が自己投資や休息の場として重要視されており、これは食費の枠組みの中でも「小さな贅沢」として定着しています。

総合的に見れば、韓国サラリーマンの食費は単なる「栄養補給」のための支出ではなく、仕事上の付き合いや社会生活、さらには個人のリフレッシュの場とも深く関わっています。そのため、韓国における食費は生活費の中で最も大きな負担であると同時に、文化的・社会的な意味合いを持つ支出でもあるといえるでしょう。

2位：住居費（家賃・光熱費）

韓国のサラリーマンにとって食費に次ぐ大きな支出が住居費です。ソウルや首都圏に住む人々は、家賃や住宅ローン、さらには光熱費の負担が生活費全体を大きく圧迫しています。韓国には独特の「チョンセ（全額保証金方式）」という賃貸制度がありますが、近年は不動産価格の高騰によりチョンセの保証金も数億ウォンに達するケースが多く、若いサラリーマンがこの方式を利用するのは年々難しくなっています。そのため月払い家賃を選ぶ人が増えていますが、ソウルのワンルームであっても月50万〜80万ウォン程度が相場であり、さらに管理費を加えると毎月の負担はさらに重くなります。

これに加えて電気・ガス・水道などの光熱費も無視できません。冬季の暖房費や夏季の冷房費は高額になりやすく、毎月10万ウォン以上を光熱費に支払う家庭も少なくありません。韓国は四季がはっきりしているため季節による変動が大きく、寒波や猛暑の年は光熱費が一気に跳ね上がることがあります。また、近年のエネルギー価格の上昇も家計に直接影響を及ぼしています。

韓国サラリーマンにとって住居費は単なる居住のための費用ではなく、社会的地位やライフスタイルにも大きく関わっています。例えばソウル江南地域などの高級住宅街に住むことは一種のステータスであり、そのために高額な住宅費を払う家庭も少なくありません。一方で、収入に見合わない高額な家賃や住宅ローンを抱え、生活の余裕が失われているケースも多く報告されています。さらに近年は住宅価格の高騰に伴い、結婚を控えた若者や新婚家庭が住宅を確保することが大きな社会問題となっています。

結果として、サラリーマン世帯の住居費負担は食費と並び家計の中心を占め、他の支出を削らざるを得ない状況を生み出しています。こうした事情から、韓国のサラリーマンにとって住居費は単なる固定費ではなく、将来設計や生活の質を左右する最も重要な支出の一つであり、その重さは韓国の都市生活の実態を映し出しているといえるでしょう

3位：交通・通信費

韓国のサラリーマンにとって3番目に大きな支出は交通・通信費であり、これは現代社会における日常生活を支える基盤的なコストとなっています。まず交通費についてですが、韓国の首都圏では地下鉄やバスが主要な移動手段であり、特にソウルは公共交通網が非常に発達しているため、サラリーマンの多くは定期的に交通カードを利用して通勤しています。片道料金は1,250〜1,500ウォン程度ですが、長距離通勤をする場合や乗り換えを繰り返す場合、月に10万ウォンを超える交通費がかかることも珍しくありません。

タクシーの利用や業務上の移動でかかる追加費用も無視できず、特に深夜帰宅や会食後の移動にタクシーを使うケースは多く見られます。これに加えて、自家用車を所有するサラリーマンの場合はガソリン代や駐車料金、高速道路料金などが大きな負担となり、都市部での車維持費は公共交通利用者の数倍に達することもあります。

通信費についても、韓国は世界的にスマートフォン普及率が高く、モバイルデータ通信の利用量も非常に多い国として知られています。サラリーマンの多くは月に5万〜10万ウォン程度のスマホ利用料を支払っており、家族全体で見ると通信費は家計の中でも大きな割合を占めています。韓国では高速な5G通信が普及していますが、その料金プランは比較的高額であり、データ無制限プランを選ぶ人も多いため、毎月の固定費が膨らみがちです。また、自宅のインターネット回線やケーブルテレビの契約料も合わせると、通信関連費用だけで家計にかなりの影響を与えることになります。

さらに、韓国社会ではスマートフォンが単なる連絡手段ではなく、仕事の進行やスケジュール管理、金融取引、オンラインショッピングなど生活のあらゆる場面に不可欠なツールとなっているため、通信費を削ることは容易ではありません。むしろ利便性を高めるために高額なプランを選ぶ人も多く、結果的に通信費の比重はますます高まっています。

交通費と通信費は一見すると別のカテゴリーに見えますが、どちらもサラリーマンが社会生活を営むうえで欠かせない必須コストであり、これらにかかる出費が家計において大きな位置を占めるのは韓国特有の生活スタイルと経済環境を反映したものだといえるでしょう。

4位：教育費

韓国のサラリーマンにとって、教育費は生活費の中でも特に特徴的で大きな負担となる支出の一つです。韓国では「教育は未来への最大の投資」という価値観が社会全体に深く浸透しており、家庭の収入に占める教育関連支出の割合は他国と比べても非常に高い水準にあります。

サラリーマン家庭では、自分自身のスキルアップや資格取得のための学習費用もありますが、最も大きな部分を占めるのはやはり子どもの教育費です。韓国では公教育だけでは不十分だと考える親が多く、学習塾（ハグォン）に子どもを通わせるのが一般的であり、その費用は月数十万ウォンに達することも珍しくありません。大学進学を控える高校生を持つ家庭では、塾代が家計の大部分を占める場合があり、場合によっては住宅費や食費を削ってでも教育費を優先する傾向が見られます。

また、英語や数学といった主要科目に加え、芸術やスポーツなどの習い事に投資する家庭も多く、子どもの将来の選択肢を広げるために多額の支出を惜しまない文化が根付いています。さらに、近年ではオンライン教育やデジタル学習コンテンツが普及し、教育アプリやEラーニングサービスに対する支出も増えています。これはIT先進国である韓国ならではのトレンドであり、スマートフォンやタブレットを活用した学習が一般的になりつつあります。

一方で、教育費の高騰はサラリーマン家庭に深刻な圧力を与えており、少子化の一因とも指摘されています。子ども一人あたりにかける費用が高すぎるため、二人目や三人目を持つことをためらう家庭が多く、これは韓国社会全体にとって大きな課題となっています。さらに、教育への支出は家庭の経済格差を拡大させる要因にもなっています。高所得層の家庭は子どもに十分な教育機会を提供できますが、中低所得層では教育費の捻出が困難で、結果として学力格差や進学率の差が生まれやすくなっています。

サラリーマンにとって教育費は単なる家計の一部ではなく、子どもの将来や家庭の社会的地位に直結する重要な支出であるため、心理的な重みも非常に大きいのが特徴です。このように教育費は韓国のサラリーマン家庭にとって避けられない支出であり、生活の質や家族計画にまで影響を及ぼす存在として位置付けられています。

5位：娯楽・趣味・交際費

韓国のサラリーマンにとって、食費や住居費、教育費のように必須ではないものの、生活の質や人間関係を支えるうえで欠かせない支出が娯楽・趣味・交際費です。韓国は労働時間が長くストレスの多い社会であるため、余暇を楽しむための消費は心身のバランスを保つ重要な役割を果たしています。

映画鑑賞やカラオケ、スポーツ観戦などの娯楽活動は定番であり、特に週末にはショッピングモールや映画館がサラリーマンやその家族で賑わいます。また韓国独自の文化として「カフェ巡り」が挙げられます。全国的にカフェの数が多く、スターバックスのようなチェーン店から個人経営のコンセプトカフェまで多種多様で、コーヒー1杯に5,000〜7,000ウォンを使うことも一般的です。こうした小さな出費が積み重なり、娯楽費として月に数万ウォン単位で計上されます。一方で、交際費もサラリーマンにとって重要な支出です。

韓国の職場文化では同僚や上司との会食「회식（フェシク）」が人間関係を深める手段として根強く残っており、飲食代や二次会のカラオケ代などが大きな負担となります。若手社員にとっては上司に気を使って支払いを分担することもあり、単なる飲食を超えた「社会的義務」の性格を持つ支出です。さらに友人との集まりや冠婚葬祭におけるご祝儀や香典も交際費に含まれ、韓国では家族や親戚とのつながりを重視する文化が強いため、このような出費が少なくありません。

また近年は趣味への投資も多様化しています。フィットネスジムやヨガ教室の会費、写真や旅行、楽器演奏など自己充実のためにお金を使うサラリーマンも増えています。特に健康志向の高まりから運動に関連する支出は増加傾向にあり、ウェアやトレーニング機器の購入も含めると無視できない金額になります。

娯楽・趣味・交際費は必須支出ではありませんが、生活の充実度や人間関係を左右する重要な要素であり、サラリーマンがストレスを解消し、社会生活を円滑に送るための投資でもあります。そのため経済状況が厳しいときでも完全に削減することは難しく、バランスを取りながら支出を続けていく性格を持っています。韓国のサラリーマンにとって、この項目は「生きるための支出」というより「より良く生きるための支出」として大きな意味を持っているのです。

まとめ

韓国のサラリーマンのお金の使い方を見ていくと、日々の生活を支える必需品から、教育や交際といった社会的・文化的背景が反映された支出まで、幅広い特徴があることが分かります。特に食費や住居費といった大きな負担の裏には、都市生活の現実や経済状況があり、一方で教育費や趣味・交際費には韓国社会ならではの価値観やライフスタイルが表れています。今回のランキングを通じて、数字の裏にある韓国人の暮らしぶりや消費傾向に少しでも触れていただければ幸いです。

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