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Vol.06

IGNITE 越境マーケティング研究所 - Crossover Vol.06

海外展示会から見えた日本商品の越境展開の可能性や、WhatsAppを安全に活用するためのポイント、顧客リストを生かしたマーケティング、富裕層へのアプローチなど、海外マーケティングの実践に役立つ情報をご紹介します。

IGNITE 越境マーケティング研究所 - Crossover Vol 6
2026年7月31日配信

このメールマガジンは、海外マーケティングとAIの交差点から実践知をお届けする「IGNITE 越境マーケティング研究所」が、日々の現場で得た知見をもとにお届けするレポートです。


目次

1. 近況
2. Insider Voice
3. 今週の実践Tips
4. 広告 × AI
5. Q&Aコーナー


▼ 1. 近況
7月16日、シンガポールで開催されていたインド関連の展示会と、食品関連の展示会「SIGEP Asia」に足を運びました。
https://sigepasia.com.sg/

食品展示会には、日本企業も10社ほど出展していました。

扱っていたのは、日本酒や抹茶、調味料など、日本ならではの食品や素材が中心です。各社の担当者と話してみると、共通していたのは「日本の商品や素材を海外で販売していきたい」という思いでした。

複数の企業と話す中で、特に可能性を感じたのが、柚子などの日本の「素材」を販売している企業です。

柚子の原料や加工素材を提供している企業では、すでに海外での販売が伸び、海外売上の比率も高まっているとのことでした。素材として販売できる商品の強みは、現地企業が自社の商品に取り入れられることです。例えば、フランスの食品メーカーが柚子の素材を見つけ、「この素材を使って新しい商品を作りたい」と問い合わせることもあるそうです。

完成品をそのまま売るのではなく、現地の商品開発に使える形で提供できるため、採用される可能性が広がります。現地の料理、飲料、菓子などに応用できる素材は、海外展開との相性がよいと感じました。

参考:
https://www.jetro.go.jp/en/trends/foods/ingredients/yuzu.html

一方で、日本酒のような完成品は、味だけでなく、ボトルのデザイン、価格、ブランドの世界観まで含めて評価されます。「日本の商品です」と説明するだけでは不十分です。産地や製法、作り手の思い、歴史などを含めたブランドストーリーを伝え、商品の価値を理解してもらう必要があります。

また、最初から海外企業との大口のB2B取引だけを狙うのは、現実的には簡単ではありません。海外企業からすれば、まだ市場で売れるか分からない商品を、いきなり大量に仕入れることはできないからです。

だからこそ、B2Bを拡大したい場合でも、まずB2C向けに海外で販売できる経路を持つことが重要です。越境ECで一般消費者に商品を届け、反応や販売実績をつくる。その中で商品を気に入った飲食店、小売店、卸売会社などから問い合わせが入り、B2Bの取引につながることがあります。

経済産業省の調査によると、日本から中国・米国の消費者に向けた越境ECの市場規模は、2019年の約2.6兆円から、2024年には約4.2兆円まで拡大しています。中国と米国の2か国向けの数字ではありますが、日本の商品を海外の消費者が購入する機会が増えていることは確かです。

参考:
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2019FY/030619.pdf
https://www.meti.go.jp/press/2025/08/20250826005/20250826005.html

食品の海外展開で重要なのは、まず試してもらう機会を最大化することです。

海外向けECサイトで販売する。展示会に出展する。現地の飲食店や小売店へサンプルを送る。日本を訪れた外国人に商品を体験してもらう。そして、海外から検索されたときに商品情報が見つかり、購入や問い合わせができる状態をつくる。こうした複数の接点を組み合わせる必要があります。

特に、Web上の販売基盤を整えてから海外の展示会へ行くことが、機会の最大化につながると思います。展示会で商品を知った人が、帰宅後にもう一度検索し、購入や問い合わせができる状態を用意しておく。そこで商品を試してもらい、関係を継続することで、将来の大口購入につながる可能性が生まれます。

一方で、展示会は出展して終わりではありません。

その場で名刺を交換した人や、商品に関心を持ってくれた人と、その後どのように関係を続けるのか。展示会後のフォローまで設計できているかどうかで、出展の成果は大きく変わります。

出展費用に加え、渡航費、通訳費、サンプルの輸送費、人件費など、多くの費用と手間がかかります。だからこそ、展示会を単発のイベントとして終わらせず、その後の検索、購入、問い合わせ、メールやWhatsAppでのフォローまでを一つの導線として設計することが重要です。

海外市場に挑戦する日本企業の姿を見て、改めて感じたのは、商品を見せるところまでではなく、「試してもらう機会をどう増やすか」「出会った後の関係をどう育てるか」まで設計することが、海外マーケティングでは欠かせないということでした。

優れた商品や素材を持ちながら、海外への届け方が分からず、可能性を十分に生かせていない企業は少なくありません。海外向けのWebサイトやECサイト、デジタル広告、コンテンツ制作などを通じて、日本企業の商品が海外で試される機会を増やしたい。日本と海外の間にある言語、情報、販売経路の壁を少しずつ低くしていきたいと感じた展示会でした。


▼ 2. Insider Voice–Yoshi, ニュージーランド出身 / IGNITE代表

*メルマガ限定コンテンツ

Insider Voiceは、IGNITE代表のYoshiです。今回のテーマは、海外マーケティングで活用されるWhatsAppの「アカウントBANリスク」と、安全に運用するための考え方です。

「海外の顧客とやり取りするうえで、WhatsAppは非常に便利なツールです。

日本ではLINEが主流ですが、海外ではWhatsAppが日常的な連絡手段として使われている国が多くあります。展示会後のフォロー、商談の日程調整、資料の共有、顧客からの質問対応など、海外マーケティングにおいて欠かせないツールの一つです。

ただし、WhatsAppをビジネスで利用する際に、必ず理解しておかなければならないことがあります。

それは、アカウントが突然停止される可能性があることです。

WhatsAppは自社で管理しているシステムではなく、Metaが運営する外部プラットフォームです。運用方法やアクセス状況に不自然な点があると判断された場合、メッセージの送信制限やアカウント停止につながる可能性があります。

特に注意が必要なのが、WhatsAppと第三者のツールや外部プラットフォームを接続する場合です。

顧客対応を効率化するために、複数の担当者がメッセージを確認できるツールや、CRM、チャット管理サービスなどを接続したくなることがあります。

もちろん、WhatsAppが公式に認めているBusiness Platformや正規の仕組みを、適切に設定して運用するのであれば問題ありません。

一方で、提供元や仕組みが不透明な外部ツールを接続したり、通常とは異なる方法でWhatsAppへアクセスしたりすると、アカウントの安全性を損なう可能性があります。

複数の国や地域から同じアカウントへアクセスする、短期間に大量のメッセージを送る、受け手が望んでいないメッセージを繰り返し送るといった運用にも注意が必要です。

アカウントが停止されると、単にWhatsAppが使えなくなるだけではありません。

それまで蓄積してきた顧客との会話履歴や連絡先、商談の経緯などにアクセスできなくなり、顧客との関係そのものを失う可能性があります。

WhatsAppを安全に運用するためには、社内で最低限、次のルールを決めておく必要があります。

・運用責任者を明確にする
・WhatsAppへアクセスする担当者を限定する
・使用する端末やパソコンを管理する
・不要な外部ツールを安易に接続しない
・短期間に大量のメッセージを送らない
・顧客の同意を得てから連絡する
・ブロック率や通報、アカウントの品質を定期的に確認する

また、顧客情報をWhatsAppの中だけに残してはいけません。

メールアドレス、電話番号、会社名、担当者名、商談履歴などは、CRMや社内の顧客管理表にも記録しておくべきです。

WhatsAppは、海外の顧客との距離を縮める非常に強力なツールです。

しかし、便利だからこそ、担当者個人の感覚だけで運用するのではなく、会社としてアクセス方法や外部ツールとの接続、顧客情報の管理方法を決めておく必要があります。

アカウントが停止されてから対策するのでは遅すぎます。

WhatsAppを使い始める段階で、「誰が、どの端末から、どのような方法で運用するのか」を明確にしておくことが重要です。」


▼ 3. 今週の実践Tips—リストマーケティングを始める

広告、SEO、SNS、AI検索など、集客の方法は増え続けています。

しかし、どのチャネルも、アルゴリズムやプラットフォームの方針、予算の影響を受けます。広告は予算を止めれば配信も止まり、SEOは検索順位が変動します。SNSも、フォロワーがいるからといって、必ず投稿が届くわけではありません。

そこで重要になるのが、リストマーケティングです。

リストマーケティングとは、顧客や見込み客のメールアドレス、電話番号、会社情報、関心テーマなどを蓄積し、継続的に関係を育てていく取り組みです。

単に連絡先を集めて、一斉に営業メールを送ることではありません。

相手が何に関心を持っているのか、どこで接点を持ったのか、現在どの検討段階にいるのかを把握し、その人に合った情報を、適切なタイミングで届けることが重要です。

例えば、同じ展示会で出会った人でも、状況はそれぞれ異なります。

・商品を初めて知った人
・詳しい資料を求めている人
・社内で導入を検討している人
・すぐに見積もりが必要な人

全員に同じ内容を送るよりも、相手の関心や検討段階に合わせて内容を変えた方が、反応は高まりやすくなります。
まぁ理想と現実で、個別最適されたメッセージの運用は難しいのですが、、、

データが溜まってきたら、セグメントを分けてメールすることが重要です。

メールアドレスや電話番号は、顧客への連絡だけでなく、広告にも活用できます。

本人の同意(オプトイン)や各サービスのルールに配慮する必要はありますが、Google広告やMeta広告に顧客データを連携することで、既存顧客への再アプローチや、類似するユーザーへの配信に生かせる場合があります。

つまり、顧客リストは、営業、メール配信、広告、顧客分析など、複数の施策を支える基盤になります。

先行きが見えない時代では顧客台帳が何よりの経営基盤になります。インバウンド向けのマーケティングも同じです。


▼ 4. 今週のニュース—三越伊勢丹に学ぶ、富裕層マーケティングの考え方

三越伊勢丹ホールディングスは、データを活用しながら、一人ひとりの顧客に合った提案を行う「個客業」への転換を進めています。

https://www.imhds.co.jp/content/dam/imhds/corporate/pdf/ir/library/annual-report/imhds_report2024_9_p28.pdf

同社が目指しているのは、単に多くの商品を案内することではありません。

店舗、EC、アプリ、接客など、さまざまな顧客接点から得た情報をもとに、その人が何を求めているのかを理解し、一人ひとりに合った商品や体験を提案することです。

この考え方は、海外の富裕層をターゲットにする際にも非常に重要です。

富裕層向けのマーケティングでは、商品の特徴や価格を一方的に伝えるだけでは、なかなか選ばれません。

重要なのは、その商品やサービスが、相手にとってどのようなメリットをもたらすのかを具体的に伝えることです。

例えば、高級旅館を案内する場合でも、単に「客室が広い」「料理が豪華」「歴史がある」と説明するだけでは不十分です。

・相手が求めているものがプライバシーであれば、他の宿泊客と顔を合わせずに過ごせることがメリットになります。
・家族旅行であれば、子どもを含めて安心して滞在できることが重要かもしれません。
・日本文化への関心が高い人であれば、一般の観光客にはできない特別な体験に価値を感じる可能性があります。

つまり、同じ商品であっても、相手によって伝えるべきメリットは変わります。

そのために必要になるのが、ファーストパーティデータやゼロパーティデータです。

購買履歴、問い合わせ内容、過去の接客履歴などから得られるファーストパーティデータに加えて、本人が直接伝えてくれた希望、好み、目的、不安などの直接獲得したゼロパーティデータを蓄積することで、より相手に合った提案ができるようになります。

結局、海外の富裕層を狙うのであれば、広く一斉に情報を届けることよりも、相手を理解し、その人にとってメリットのある内容を、適切な言葉で伝えることが重要です。

富裕層だから高い商品を買うのではありません。

自分の時間を有効に使えるか、自分の希望を理解してくれるか、他では得られない体験があるか、安心して任せられるか。

そうした価値が伝わったときに、初めて選ばれる理由が生まれます。

三越伊勢丹が進める「個客業」も、顧客を大きな市場の一部として見るのではなく、一人ひとりの違いを理解し、その人に合った価値を提案する取り組みです。

海外マーケティングでも、これから重要になるのは、どれだけ多くの人に情報を届けるかではありません。

どれだけ相手の近くに立ち、その人にとって意味のあるメリットを伝えられるか。

そこに、富裕層マーケティングの本質があると考えています。


▼ 5. Q&Aコーナー

越境マーケティング研究所への質問を募集しています。
海外マーケティング、AI活用、多言語SEO、広告運用など、越境ビジネスに関するご質問をお寄せください。

宛先: [email protected](件名に「Q&A」とご記入ください)
(400文字以内 / お一人様月1問まで)

全てのご質問に必ずお答えできるわけではございませんが、いただいた質問は本メルマガ内で順次回答いたします。

Q.1
海外の見込み客への対応は、AIや自動返信ではなく、人が個別に行った方がよいのでしょうか?

A.
特に、高価格帯の商品やサービス、富裕層向けのビジネスでは、人による個別対応が大きな差別化になります。

例えば、自分が海外旅行で高額なサービスを検討しているとします。

質問を送ってもAIによる定型的な回答しか返ってこない企業と、担当者がWhatsAppで親身に相談に乗ってくれる企業があった場合、どちらを選びたいと感じるでしょうか?

商品や価格が同じであれば、後者を選ぶ人は少なくないはずです。

特に海外の顧客にとっては、言語や文化、支払い、配送、現地での利用方法など、購入前に不安を感じる要素が多くあります。そうした不安に対して、人が個別に答えてくれること自体が、選ばれる理由になります。

もちろん、すべての対応を一から手作業で行う必要はありません。

会社紹介や基本的な案内はテンプレート化し、よくある質問はAIや自動返信を活用してもよいでしょう。

ただし、相手が関心を示した商品、過去の会話、具体的な質問、検討状況など、重要な部分は人が確認して対応するべきです。

共通部分は仕組み化し、信頼に関わる部分は人が対応する。

この組み合わせが、現実的で効果的な方法だと考えています。

Q.2
WhatsAppで顧客とやり取りできれば、メールアドレスは取得しなくてもよいでしょうか?

A.
WhatsAppが主要な連絡手段であっても、メールアドレスは取得しておくことをおすすめします。

理由は、一つのプラットフォームだけに顧客との関係を依存するのは、非常にリスクが高いからです。

私自身、以前Amazonを通じてアメリカ向けに商品を販売していた際、アカウント上の問題によって、売上が一時的に保留された経験があります。

最終的には問題なく解決しましたが、売上の大部分を一つのプラットフォームに依存している状況で、突然アカウントが使えなくなる恐怖は、今でもよく覚えています。

Amazonは非常に強力な販売チャネルです。だからこそ売上も大きくなります。

しかし、どれだけ売上があっても、プラットフォームの判断でアカウントが停止されれば、自社だけではコントロールできません。

その経験から、Shopifyなどの自社ECも持ち、販売経路を分散するようになりました。

WhatsAppなどのメッセージングアプリも同じです。

便利で、顧客との距離が近く、海外市場では非常に強力なツールです。しかし、外部のプラットフォームであることに変わりはありません。

「すべての卵を一つのかごに盛るな」という格言があります。

一つのかごにすべての卵を入れていると、そのかごを落とした瞬間に、すべての卵が割れてしまいます。

顧客との接点も同じです。

WhatsAppだけではなく、メールアドレス、電話番号、CRM、広告のオーディエンスリストなど、複数の形で関係を管理しておく必要があります。

とはいえ、最初からメールでのやり取りを求めると、顧客に負担を感じさせることもあります。

そのため、最初はWhatsAppで気軽にコミュニケーションを始め、その後、資料送付、見積書、会員登録、イベント案内など、自然な理由をつくってメールアドレスを取得する流れがよいでしょう。

重要なのは、WhatsAppかメールかを選ぶことではありません。

WhatsAppで関係を始め、メールやCRMにも接点を残し、複数の手段で関係を継続できる状態をつくることです。


株式会社IGNITE 越境マーケティング研究所
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