インバウンド市場規模の現状とは?今後の予想についても解説

新型コロナウイルスの影響により2020年から2022年半ばにかけて、ほとんど消失していたインバウンドの需要ですが、2022年の水際対策が緩和されたことで徐々に日本のインバウンド市場にも活気が戻ってきました。

そして、2023年の8月には日本を訪れる外国人観光客が急増し、コロナ前の水準を上回る結果となりました。さらに、日本政府観光局の発表によると、2024年3月の訪日観光客数は308万1600人で、2019年3月のコロナ以前の数字を11.6%上回りました。この結果、2019年7月の最高記録である299万1189人を超え、初めて1ヶ月で300万人を突破しました。

参考元:日本経済新聞

このように、訪日外国人の増加は、少子高齢化が問題となっている日本経済に大きな影響を与えており、今後もさらなる成長が期待されています。

しかし、インバウンド市場の現状を正確に把握し、将来の動向を予測することは容易ではありません。この記事では、最新のデータをもとに、インバウンド市場規模の現状と今後の予想について詳しく解説します。

インバウンド市場の現状

訪日外国人旅行者数は、2019年に過去最高の3,188万人を記録し、その後2020年には新型コロナウイルスの影響で大幅に減少しましたが、2023年には約2,506万人まで回復しました。観光局の調査によると、2024年2月の1ヶ月で2,78万8千人に上り、これは2019年度の同月比で7.1%増という結果になっています。

国別では、韓国が最多となり、台湾、中国とアジア圏からの観光客が上位を占めているのが分かります。これらの東アジア3カ国で全体の約6割を占めており、日本観光におけるアジア市場の重要性が伺えます。

参考元:訪日外客数(2024年2月推計値)

地域別では、圧倒的に東京への観光客が多くなっています。次に大阪と京都、北海道が続いています。

日本の繁華街での食べ歩きやショッピングを目的としてくる観光客はやはり、東京や大阪を選んでいます。また、日本の歴史や伝統文化に関心を持っている方向けに、日帰りで温泉や景勝地観光ができる場所も人気となっています。

参考元:インバウンドが多い都道府県ランキング、2位は大阪府、1位は?:今こそやるべきインバウンド対策を解説 | 訪日ラボ

インバウンド観光に関係する業種とは?

インバウンド観光は、日本経済に大きな影響を与える重要な産業であり、様々な業種が関わっています。主に宿泊や飲食、小売、交通そしてエンタメ業界があります。

宿泊業界では、外資系ホテルチェーンや高級旅館が外国人観光客のニーズに合わせたサービスを提供しています。例えば、世界的に有名な「ヒルトン」が日本各地で積極的に展開しています。東京、大阪、京都、沖縄など人気観光地に立地し、多言語対応やハラール食の提供などインバウンド需要を取り込んでいます。

参考元:対象ホテル一覧 | HILTON PREMIUM CLUB - ヒルトン・プレミアムクラブ・ジャパン

飲食業界でも、多言語メニューやハラル対応などで外国人観光客を取り込む工夫が見られます。代表的な日本食の寿司を提供する「くら寿司」は、インバウンド客に向けて「提灯ウォール」や「番付ウォール」、「ロゴネオンサ」などといったSNS映えするフォトスポットの導入により、寿司だけでなく食事体験全体を楽しめる工夫をしています。また、海外の方に人気の食材を使用した新感覚の手巻き寿司を提供するなど、メニューにも工夫を凝らしています。

参考元:くら寿司なんばパークスサウス

小売業界や交通業界では、免税店や土産物店が外国人向けの商品を販売し、多言語対応のスタッフを配置、外国人向けのパスや特別運賃を設定するといった利便性の向上を図っています。

さらに、テーマパークや美術館などのエンターテインメント施設も、多言語対応やインタラクティブな体験を提供することで、外国人観光客を惹きつけています。

このように、インバウンド観光は多岐にわたる業種が関わる総合的な産業であり、各業種が連携しながら外国人観光客の需要に応えることが求められています。

インバウンド成長の推進要因

インバウンド市場は近年急成長を遂げており、この成長の推進要因としてスマートフォンの普及率が2019年に84%に達し、オンライン予約が主流になったことが挙げられます。下記の表では、2022年の「世界人口に対するスマートフォンの普及率」が68%になっていることが分かります。

これを受けて、SNSが発達し、デジタルマーケティング戦略も大きく進化していきました。InstagramやX(旧:Twitter)を通して口コミの拡散力が上がったことで、日本の魅力をより発信しやすくなり、訪日意欲の向上にも繋がっています。

参考元:2016年~2022年 世界人口に対するスマートフォンの普及率

また、新興国の中間層の所得向上による海外旅行の需要が高まり、一人旅といった個人旅行や体験型観光の人気上昇など旅行スタイルの多様化といった消費者の行動の変化も関係していると言えるでしょう。

これらの要因が相まって、現在のインバウンド市場の飛躍的な成長を支えています。

2023年のインバウンド市場規模について

観光庁の調べによると、2023年度の訪日外国人旅行消費額は5兆2,923億円となり、過去最高となっています。これは、2019年の消費額4兆8,135億円を9.9%上回る水準です。

参考元:【訪日外国人】2023年の旅行消費額が2019年を越え過去最高に - 展示会とMICE

この主な理由は、訪日外国人旅行者数の急速な回復と1人当たりの消費額の増加の2点だと考えられます。まず、2023年の訪日外国人旅行者数は2,500万人を突破し、コロナ禍前の水準の8割まで回復しました。特に東アジア、欧米豪・中東地域からの訪日客が大幅に増加しています。

参考元:訪日外国人数、2023年は年間2500万人を突破、コロナ前の8割、12月は単月でコロナ後最多に(直近10年の推移グラフ付き) (トラベルボイス) - Yahoo!ニュース

そして、 2023年の訪日外国人1人当たりの平均旅行支出額は21万2,193円と、コロナ前の2019年比33.8%増加しました。これらの大幅な増加が2023年のインバウンド市場規模の過去最高更新に繋がったと言えるでしょう。

今後の日本のインバウンド市場規模について

日本のインバウンド市場における立ち位置は、アジアの高い成長率を背景にインバウンド観光の強国となっています。特に、中国、タイ、マレーシア、シンガポール、インド、フィリピン、韓国、台湾などの国や地域では富裕層が増加しており、これらの国や地域に比較的近くに面することから今後の訪日旅行者数の増加が見込まれます。

しかし一方で、日本のインバウンド客の構成比を中国やタイと比較すると、アジアや太平洋地域への依存度が高く、欧米からの集客が少ないことが特徴として浮かび上がっています。2030年に政府目標の訪日客数6000万人を達成するには、アジア・太平洋地域からの集客を維持しつつ、欧米からのインバウンド客の誘致に力を入れることが不可欠と言えます。

参考元:アジア富裕層データベース | グローブリンク

地域別の訪日予測

観光庁の「訪日外国人旅行者の受入環境整備に関する現状調査」によると、今後数年間で訪日外国人旅行者数は着実に増加すると予測されています。特に重要な市場である地域や国の見通しは以下の通りとなっています。

アメリカ

2019年のアメリカからの訪日旅行者数は172万人でしたが、2030年には300万人を超えると予測されています。アメリカ人旅行者は日本の文化、食事、自然に強い関心を持っており、今後もこの傾向は続くと考えられます。

特に、日本食の人気が高く、ラーメンや寿司、丼ものといった新鮮で斬新な物が食べたいと日本に訪れる人も多くいます。

参考元:訪日外客数(2024 年 2 月推計値)

また、ビジネス目的での訪日も比較的増えていることや道路上の英語表記も導入が進んでいることからレンタカーを利用して観光する人もどうかしています。

韓国

2023年の韓国からの訪日旅行者数は約2,067万人に達しています。新型コロナの影響により、訪日にはVISAが必要となっていましたが、2022年にそのVISAが免除になったことをきっかけに韓国からの訪日観光客の数も一気に増えていることが分かります。

参考元:ポストコロナ|韓国の訪日観光客の実態とは?データを基に徹底解説 | ENGAWAblog

韓国人旅行者は日本の近代的な都市環境、ショッピング、美容・健康関連サービスに高い関心を示しています。韓国から最も近くて比較的安く旅行ができる点でも、今後の旅行者数の同化に期待できると言えるでしょう。

中国

2019年の中国からの訪日旅行者数は約952万人でしたが、2024年1月には41万5,900人で、前年同月比44.9%減となっています。

しかし、徐々に回復の兆しがみられます。2023年の8月には、中国からの団体旅行が解禁され他こともあり、観光局は2030年に、1,800万人を超える中国人訪日客を見込んでいます。

参考元:【図解】訪日外国人数、2023年7月は232万600人とコロナ前対比で約80%まで回復!中国人団体客許可によるさらなる回復に期待-日本政府観光局(速報) | 越境ECならWorldshoppingBIZ

中国人旅行者は特に、日本の自然や温泉、ショッピングに強い関心を持っており、今後も「爆買い」を求めて訪日することが見込まれます。

フランス

2023年は2019年の水準の9割まで回復しており、今後も順調に伸びていくことが予想されています。日本へは、12〜13時間のフライトがかかるにもかかわらず、日本の伝統文化や現代アート、美食に強い関心を持っている人たちが多く訪れています。

参考元:フランスからの訪日インバウンド客の特徴と集客のために知っておくべき10のコト

現代アートには、草間彌生さんの「かぼちゃ」シリーズなどのインスピレーション作品やパフォーマンスアート、体験できる「チームラボ」のような没入型のアートに魅力を感じる人が多く見られます。

まとめ:日本は今後もインバウンド成長が期待できる!今から対策を!

日本のインバウンド市場は、アジアの中でも強い存在感を示しており、今後も市場の拡大が見込まれています。特に、中国、タイ、マレーシアといったアジア近隣の国の富裕層をターゲットとした戦略が重要となってきます。

具体的には、宿泊業や飲食業、小売業などのインバウンド関連業種は、多言語対応やキャッシュレス決済の導入、SNSを活用したプロモーションなど、早急な対策が求められています。

これらの取り組みにより、日本のインバウンド観光は更なる成長を遂げ、アジアにおける観光大国としての地位を確立することができるでしょう。

この記事を監修した人
Daisuke K
マーケター、CMO
2021年にCMOとしてIGNITEのへの参加を果たした。以前からマーケティング業界での勤務経験を有し、IGNITEでは海外市場向けのマーケティング戦略を展開している。あらゆる国や地域からの、BtoB、BtoC案件を総監し、海外進出を検討する日本国内の企業から、日本への参入を希望する海外企業までのサポートを行っている。
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